地図001.野洲川流域地図 建設省近畿地方建設局琵琶湖工事事務所編 『野洲川改修計画概要』(S58.5)より
浅野川は甲賀市甲南町域のいちばん東を流れる川である。甲南町上馬杉の山地を水源として。下馬杉・上野川・下野川・柑子の集落沿いを流れ下り、新名神を越えてからは野尻・竜法師の間を流れ下って、甲南町寺庄集落の西方で杣川に合流する。
県境はたんなる丘陵としか見えないが、地図を子細に見ると確かに分水嶺である。だから三重県側などは普通の道路が走っていたりしておよそ県境という雰囲気ではない。
地図002.浅野川流域分水嶺地図 (国土地理院Web地図に加筆)
左の地図は主として甲南町(一部甲賀町を含む)と三重県との県境部を示したものである。東の余野越えから西の岩尾山まで、県境の距離はざっと15Km、その峠を越える県道は6本、一番西の岩尾越えだけが一車線の細い道であるが、あとはそれぞれ立派な2車線のどこへ出しても恥ずかしくない道である。無意識に走れば県境を越えたということを感じない、そんな雰囲気のところである。
で、当該の浅野川流域の分水嶺に当たる部分には3本の峠越えが存在する。3本ともにおよそ県境らしくない雰囲気であるが、その中で特に”玉瀧越え”とした峠、県道775号が通るが、峠に近い滋賀県側の交差点では広域農道が分離していく。そこまでの距離は700mほどでしかない。
またさらに上流に位置する馬場出越え1・2はもともとあった峠越えを改良するときに、元の道をそのままに残して、改めて新しい峠道を作った。それだけ地元の人が古い峠道に愛着を持っていたということだろう。そしてさらに面白いのは新旧2本の峠道が途中でX字型にクロスしているという付録までついている。何とも楽しいところである。いずれも県境の標識がなければ、およそそれだとは考えられない、ただのちょっとした丘を越えたという雰囲気の峠である。
|