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S06.滝川流域

S0601. 消える分水嶺
取材:2018.02
初稿UP:2018.03.08 
(補遺:2021.06.20)


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地図003.飯道山付近町境界線地図  (昭文社ライトマップル滋賀県道路地図より)
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  これは『昭文社ライトマップル滋賀県版』の当該部分である。前にも書いたように国土地理院Web地図には町境界線は載っていない。その点、ライトマップルでは”町”ごとに色分けされていて分かりやすい。いまの場合は信楽町宮町と水口町牛飼の境がそれにあたるのだが、その線は南へ下るほど西へずれていく。その間の事情は細かく見ると分からなくもない。いくつか並ぶピークや尾根を丹念にたどっているのである。しかし、その行き先は・・・。なんと川をまたぐのである。




地図004.隼人川・町境界付近地図  (マピオン地図に加筆)
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  水口町・甲南町・信楽町の町境が交わるところである。三雲・信楽間の主要な交通路はすべてここを通る。国道307号が地上を走り、その上を信楽高原鉄道がまたぐ、その上を新名神が走る。そしてさらに国道の下を隼人川がくぐる。そこを町境界線が横断しているのである。いうまでもない、この線もまた分水嶺ではない




写真001.国道307号P点付近
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 上の地図004で示した部分の実際の風景である。何とも複雑な構図である。いちばん上を新名神が走る。その下が信楽高原鉄道、そして国道。その下をさらに隼人川が流れるというのだからややこしい。と、この現場に立てばこの4つは肉眼で見ることができる。問題はここからである。そこをさらに目に見えない町境界線が通っているという。この町境界線がひょっとして「消えた分水嶺」ではないかと考えたが、さすがにこれは無理だった。分水嶺が堂々と川(隼人川)を横切ることになるのである。これは絶対にありえないことである。
  もっともそんな七面倒くさい理屈をこねなくても、国道307号を実際に走ってみると、最高点が庚申山入り口あたりであることが直感的にわかる。いわゆるP点はそれからかなり下ったところであることは明白な事実である。P点(この町境界線が交わるところ)は分水嶺ではない




地図005.隼人川・町境界付近地図  (マピオン地図に加筆)
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 とすれば分水嶺が抜けるのはどこか。少なくとも現在の市境・町境(P点)ではない。実際の川の絡みを読むしかない。地図の左の方P点が上の地図004のP点、信楽町と水口町・甲南町の町境が隼人川とクロスするところである。少なくともこれは分水嶺ではない。だとすると隼人川を跨がずに(もちろんそれ以外の川も跨がずに)北から南へ抜けるところがあるのかどうか。
  とにもかくにも隼人川である。この川がどう流れているのか。地図で見るとP点から国道307号沿いに1.5KmほどさかのぼったQ点で北へ折れ、飯道山に向かってさかのぼっていく。そこが源流である。ちなみに下流へ向かうと、南の方から信楽高原鉄道沿いに下って来た大戸川に合流しさらに西進、大津市南部を横切って、南郷洗堰のすぐ下流で瀬田川に合流する。
  さて、その隼人川源流から200m余り東へ離れてほぼ並行に流れ下る川がある。いうまでもない、これが滝川源流である。それが高原鉄道をくぐったR点で東へ折れる。分水嶺が抜けられるのはそのQR間300m足らずでしかない。
 いま辿っている分水嶺(赤線)はこの点(Q点とR点との間)を通らなければならないのである。




2.消えた分水嶺を探す
地図006.飯道山・国道307号間鳥瞰図  (カシミール3Dによる作図)
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  以上のようなことで飯道山山頂と小野谷越え間の分水嶺は、隼人川・滝川が東西に分かれるQ点とR点との間の300m弱の間を抜けることが分ってきた。ではその赤い線はどのようなルートを通るのか。左の地図は、飯道山から南へ、高原鉄道を越えるまでの鳥瞰図である(滋賀県と三重県との県境桜峠付近の上空7000m付近を視点としている)。  










地図007.飯道山・国道307号間分水嶺地図  (国土地理院Web地図に加筆)
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  上の鳥瞰図をもとに改めて国土地理院のWeb地図に分水嶺を引いたものである。それをまたぐ国道307号・信楽高原鉄道の峠を高原鉄道の信号所の名前を使って「小野谷越え」とした。並行して走る新名神はトンネルの中である。  












地図008.飯道山・国道307号間分水嶺地図  (国土地理院Web地図に加筆)
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  つぎは「小野谷越え」以南の三重県境の先端C点まで。三重県域がぐっと入り込んで来ているところである。目印としては岩尾山(471m・左の地図では南に外れている)がある。
  ここを初めて国土地理院Web地図で見たときの印象は、目立った尾根もないし、しっかりした川もない。のっぺりした高原状の地形。ここで分水嶺をどう引けばいいのか。正直どこから手をつけていいのやら。まさにマイッタの一言。  






地図009.国道307号・三重県境C点間の鳥瞰図  (カシミール3Dによる作図)
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  あれこれ考えたが、考えているだけでは話が進まない。飯道山と国道との間でやったように、カシミールで上空数1000mからの鳥瞰図を作ってみた。地理院地図を見たときは目立った尾根もないのにとお手上げだったが、実際に鳥瞰図を作ると意外や意外、砂場の砂を右手の4本の指でぐいと引き裂いたような線(指の線が谷筋)が左上(北西)から右下(南東)向きに見えて来た。このどれかの線が国道の小野谷越えから県境のC点までの方向と一致していてくれたら話は簡単なのだが、実際には引っかいた線を斜めに横断しなければならない。
  余談だが、この谷筋を見たときに、手前のC点から出た尾根をまっすぐに北西へ進み、国道に近づいたところで東へ(右へ)折れて小野谷越えへ近づく手を考えてみた(地図の黄色の点線)。最後の最後に来て、本当に川はないかと確かめてみたら、何のことはない、国土地理院のWeb地図では記載されていない2本の川が、マピオン地図では記載されていた。これはどちらを信用したらいいのか。ありもしない川をわざわざ間違って記載することはないだろう。実際には川があると考えるのが正論だろう。ということで、この北周り案(細い黄色の破線で表記した)を廃案とした。  




地図010.国道307号・三重県境C点間の分水嶺  (国土地理院Web地図に加筆)
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  上の鳥瞰図に示した赤の一点鎖線が結論だけど、それに至るまでの過程を一言。
  あれこれ悩んだ末、マピオン地図が町ごとに色分けされていることに気がついた。C点を出発点とする町境があるかないか、さっそく調べてみた。・・・・あった。信楽町牧と甲南町杉谷との境(左の地図で緑の一点鎖線)がそれに当たる。しかしそれはC点からそのまま北北東へ進んでP点を通る。例の新名神・高原鉄道・307号・隼人川の写真001のところ(甲南町側から見たところ、甲賀市信楽の標識が立っている)である。なんだかんだと大騒ぎをして結局元へ戻ったことになる。
  苦肉の策で考えたのが、上の地図009の黄色の点線だったが、これは前述の通り、川を横切ることになりアウト。もっと手前で横切らなければならないはず。よく見ると甲南町杉谷の北東側に”甲南町塩野”という地名がある。塩野?、たしか塩野温泉というのがあった。こんな山の中ではなかったぞ。調べてみるとP点から5Kmも東、杣川から800mほど西のところ。そこがすでに甲南町塩野、そこから延々と細く西に伸びて、ここがその最後のところだったわけ。そして、甲南町杉谷との境が東海自然歩道を横切って小野谷越えあたりへ達している。その線が川を横切っていないか。恐る恐る調べてみた。その気配はなかった。この線が分水嶺として正しいかどうかは、私自身も判断できない。なんだかんだとごまかしながらの地図遊びである。

  以上、初稿UP:2018.03.08



◆補遺:2021.06.20

  上のレポートを書いて5か月後に入院、作業がストップした。退院後は体力、特に脚力がままならず、取材を再開したのが2019年秋から。季節を見計らって取材を進め、2021年4月に予定した全コースを一応終了することができた。このあと最初から読み直し、最後の手直しにかかる予定であるが、たまたま、飯道山から岩尾山までの分水嶺を読むにあたって難儀したところを読み直していて、最初のときに、ひょっとして地図の読み間違いをしていたのではなかったかという部分に出合った。上の地図008・009・010の部分である。当時の記録はそのまま残すとして、今回読み直した部分を書きなおしておく。



地図010A.国道307号・三重県境C点間の分水嶺  (国土地理院Web地図に加筆)
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  上の地図010の文章にあるように、随分難儀をした場所である。国土地理院のWeb地図では読み切れず、マピオン地図が地域の町別にエリアを色分けしているのに気がつき、その境を読み込むことで、逃げ切った場所である。今回、改めてWeb地図を読み直していて、「?」と思う部分に気がついた。左の地図010Aに「X」マークをつけた部分である。すなわち、飯道山から南下を始めた分水嶺が、隼人川・滝川の間を抜け、「小野谷越え」で旧信楽街道・信楽高原鉄道・国道307号の3本とクロスする。そのあと、さらに新名神のトンネルの上を越えて、さらに南下したところである。

地図010B・地図のX点付近アップ

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  右の地図010Bは、左の地図010AのX点付近をアップしたところである。隼人川と滝川の間を下ってきた分水嶺が、小野谷越えを経てQ点に達したところである。このあと、破線の通りに進めばいいように見えるが、地図を広げてみると分かるが、杉谷川水系に迷い込み、袋のネズミになる。2018年の時点で難儀したのは、この突破口を見極められなかった点である。

地図010C・地図のX点付近アップ

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  どう考えてもQ点までは間違いはないはず。どこかに突破口はあるはず。周辺には、隼人川・滝川それに杉谷川が集まってきている。すべて源流である。両者が数10mに接近することがあり得る。いや、あり得るではなしに、それが”当たり前”なのである。2018年の時点でそこまでのことが理解できていたかどうか。
  いまの場合、隼人川源流と杉谷川源流が接近している。最初、a 〜 b 間の川の線が間違っていると考えた。本来この間は開いている(川は流れていない)のに、うっかりミスで川の水色の線を入れてしまったのだろう。ここさえ突破できたら、あとはちゃんとつながるはずだ。念のためにと、a , b 2点の標高を調べてみた。以前の紙の地図ではどうにもならなかったが、いまのWeb地図ではこんな細かいことでも読むことができる。結果は明らかに b 点のほうが高かった。標高に差があるということはその間を水が流れるということだ。”この川の線は間違いだ”としでそこに分水嶺を通していたら、とんでもない恥をかくところだった。
  改めて出直しである。b の流れはどこまで続くのか。細かく見ていくとまだ右手(東)へ伸びている。と、そこで気がついた。川の線は細いブルーの線。もう1本が絡んでいる。黒い実線や破線は道だ。それが川の線と重なっているから a , b を経て c まで続いていものと見間違えていた。これが続いておれば、隼人川と杉谷川とが、尾根の上でつながっていることになる。そんなケッタイなことはありえない。B'- c 間は、川はつながっていない。続いているのは道だった。杉谷川流域から隼人川流域への峠道、分水嶺が大手を振って通れるところだったのである。




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