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N05.山川流域

N0404. 分水嶺:グリーンBP越え・中畑越え

取材:2015.10
初稿UP:2015.11.16


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地図41.山川流域図(地理院地図より)
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 前項の思川流域は、最初想像したよりは範囲が広く、分水嶺を越える峠道も15あまり。それに比べると今回は流域も狭く、道路の密度も小さくなっており、主な峠としては、日野水口グリーンバイパス、中畑集落付近の「グリーンBP越え」、県道540号中畑集落付近の「中畑越え」、および、県道182号と183号がクロスするあたり、甲賀市と日野町の市町境の「R182越え」の3つに限られる。水口町東部と土山町西部が接するところがその範囲である。  






1.グリーンBP越え

 日野水口グリーンバイパス。現在は一般道になっているが開通当初は有料の自動車道だった。だから人間が歩くようには考えられていない。沿道には車を置く場所もないし、人間が歩くスペースもない。この項の写真はすべて車内から撮影したものである。



写真401.中畑分岐 
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 甲賀市水口町から蒲生郡日野町へ向かう。この道路は日野水口丘陵を越えるため、そのほとんどが山の中を走る。したがってよほどはっきりした目印がないと、現在位置が分からない。その中で一つの目印になるのが、中畑集落への分岐点。道路標識と右折ゾーンが見えてくる。関係部分をアップしたところ





写真402.中畑分岐 
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 中畑への分岐点から日野町側を見たところ。写真ではしばらくの間水平に走って、遠くクルマが並んで見えるあたりから上りにかかっているように見えるが、地図で見ると最初のしばらくが下りで、そのあと水平になっているようでもある。こんな単純なことすら読み取れない。難しい道路である。





写真403.上り坂? 
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 上り坂らしい。しかしこの写真では現在位置を読み取るすべがない。対向してくるトラックの位置あたりが峠のようにも読めるが本当の峠なのか、単なる勾配の不連続点なのかそれが判断できない。アップをもう1枚






写真404.跨道橋 
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 跨道橋が見える。地図で見るとこのあたりを市町境が通っている。確かにその下に標識が見える。こういう写真を撮る場合は、好天でコントラストの強い日はつらい。ましてや今回のようにクルマの中からの撮影となると自由が利かない。うっかりするとその存在すら見逃してしまいそうである。





写真405.市町境 
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 市町境の標識をアップしたところ。上下2枚に分かれていて、下の方に日野町とある。上は裏向いている。クルマの中からでは確かめようがないが、間違いなく「甲賀市」ないしは「甲賀市水口町」とあるのだろう。







写真406.市町境 
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 ここのところだけは裏をとっておきたい。しかし、クルマを止めて歩いて確認というわけにはいかない。一旦通過して引き返す。光が逆になって、日野向きよりさらに撮りにくかったが、とりあえず撮るだけは撮った。






写真406A.市町境 
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 跨道橋の下、影の中に幽霊のように立つ標識をアップしたところである。確かに予測した通り「甲賀市」とある。しかし・・・、その下に当然見えなければならない日野町の裏向きが見えない。上下2枚に分かれていた標識の下の1枚が見えないのである。手品かお化けかどっちかである。そういえば日野町、わたむきホール虹のお化け屋敷は近年とみに好評だと聞く。
 しかし、お化け屋敷はお化け屋敷。標識は標識。これをお化けで済ますわけにはいかない。水口から日野へ向けて走るときは間違いなく標識は上下に2枚見える。それが逆向きに走ると下の1枚が消える。別の標識がもう1本あるのではないかと確かめたが、それはない。日を改めて再度挑戦。時間を少し遅らせてみたが、大して効果なし。肉眼で見ても結局見えなかった。




写真406B.お化け退治 
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 次の項の中畑越えの取材で時間つぶしをして、改めて挑戦。運よく曇ってきた。これなら何とかなるかもしれない。近づいてくる。やっぱり見えない。写真は少し手前からのもの、見えるだろうか。一瞬のチャンスも逃すわけにはいかない。連写する。真横まで近づいた時、ちらと黒い板が見えた。そうか、幽霊の正体は黒い板か。なりふりかまわない画像処理で幽霊をあぶりだしたもの。いやはや、お化け退治も大変でした。




写真407.市町境を越えて 
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 市町境を越えてあとは一気に下りに向かう。後で分かるがこの下りはこのコースのひよどり越えだった。









写真408.迫谷川交差点 
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 緩いカーブを曲がり切ると迫谷川交差点(交差点には名称がついていない。代わりに上迫・下迫の馬鹿でかい標識がついている)が見えてくる。普通の常識では「上迫」が上だと思うのだが、ここは違う。下迫の方が強いのか。







写真409.迫谷川 
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 グリーンバイパスとクロスする迫谷川。ここはもう日野川流域である。左端に交差点の赤信号が見える。クルマが走っているのがグリーンBP。その向こう、屋根が光るのが上迫集落。








写真410.最高点 
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 ということで市町境は例のお化け騒動の標識のところを通っている。しかしこの付近の道路の最高点はそこよりももう少し水口よりのところだと思われる。写真は多分ここら辺りかなと思われるところであるが、これとても絶対というわけではない。そしてここがどこかといわれたら、分かりませんと答えるしか手はない。そういう意味ではまさに幽霊のような道路ではある。






地図42.グリーンBP越え付近標高図(GoogleMapより)
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 グリーンBPは自動車専用道路としてこじんまりとして走りやすい道路である。しかし峠探訪などという遊びをする者にとっては捉えにくい相手である。両側が森の単調な風景で自分の位置が分かりにくい。そんなことで上の写真でけりをつけようとも考えたが、しっぽを巻いて逃げて帰るようでどうも気色が悪い。そこでGoogleMapを利用して、道路沿いの標高を打ち出してみた。全コースをやる気はないので、グリーンBP越えをポイントにして中畑分岐から名無しの「上迫・下迫」交差点まで。
 大名行列のように数字を並べただけだけど、数字を見て驚いた。かなり低いと思っていた中畑分岐の交差点が201m、それに対して迫谷川交差点が180mだという。中畑分岐の方が20mも高いことになる。じゃ水口方面で180mとなるとどのあたりか。読んでみて驚いた。旧東海道交差点あたりがその高さである。




地図43.グリーンBP越え付近標高図(GoogleMapより)
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 上の数値をもとにしてグラフを作ってみた。中畑分岐交差点がすでに高原状のところ。上下を繰り返しながら最高点を越え、市町境を越えたところから一気に迫谷川めがけて下りにかかる。グラフで見ればひよどり越えである。
 この下りにはちょっと驚いたが、考えてみれば当たり前のことだともいえる。今対象としている山川は野洲川の支流。迫谷川は日野川の支流。野洲川と日野川はともに鈴鹿山系を源流として湖東平野を流れて琵琶湖に注ぐ。それもお互いが流域を接する隣同士、まあ言ってみれば兄弟のような関係である。グリーンBPはその両者を跨ぐ。それらの高さが同じであってもおかしくない。ちなみにグリーンBPの野洲川畔と日野川橋畔の標高を調べてみた。それぞれ173.5m、175.0mだった。迫谷川への急な下り坂はその谷が深かったというわけではなく、分水嶺が迫谷川に近かったことによるものであろう。念のため、旧東海道交差・市町境間が3.3Km。市町境・迫谷川交差点間が0.6Km(どちらも直線距離)。




2.中畑越え
> 地図44.中畑越え付近地図(地理院地図より)
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 県道540号、グリーンBPから分岐して水口町中畑を経由して日野町上迫に達する。その間の分水嶺が中畑越えである。上で述べたようにグリーンBP中畑分岐は標高201m。その後多少の上り下りはあるが、中畑集落の標高がだいたい201m前後。村はずれの三角池付近に、地理院地図には201mの水準点の表記がある。同じ場所でもGoogleMapの方が多少高い値が出るが、実際に歩いてみても大体このあたりまでは集落内とほとんど変わりはない。このあと徐々に上りになるが、直線距離約800mで10数mの差でしかない。  




写真421.中畑集落はずれ 
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 中畑集落のはずれである。集落そのものが200mほどの高さに位置するが、道路のアップダウンはほとんどない。この道路の突き当り、ガードレールが右へ曲がっているところで、Y字分岐を右へ取り、さらに突き当りが三角池である。






写真422.三角池畔 
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 道路右が三角池の防護用ネット。池の岸に設置されており当然水平である。それに対して道路(県道540号)が緩い勾配で登っていく。県道といっても写真に見るようにクルマ1台がやっとの道である。峠までに2,3か所道に膨らみを持たせて離合できるようにはしてある。クルマはめったに来ないから何とかなるが。





写真423.丸池畔 
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 クルマが止まっているのが上の地図の「丸池畔」。例のふくらみに止めた私のクルマである。離合スペースに車を止めたらあとのものが困るじゃないかと叱られそうだが、クルマはめったに来ない。仮にそこで離合が必要になったとしても、2,3台分の余裕があるから絶対大丈夫。
 丸池とは私が勝手につけた名前。中畑越えの100mほど手前にある池である。





写真424.丸池 
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 右の日が当たっている林の中に池がある。車で通っただけでは池の存在は絶対に気がつかない。クルマを置いて歩いてみても、普通に見ただけではまず気がつかない。何とかして写真にと思ったが、それすら不可能だった。






写真425.丸池を過ぎて 
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 丸池を過ぎたところで100mほどの直線道路。ほぼ水平である。右側に水たまりのような池がある。先ほどの丸池ではない。付近にはヨシが生えて立派な湿地である。








写真426.峠近く 
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 道が緩くカーブする。写真425の突き当りのところである。日陰にカーブミラーが立っていて、何やら書いてある。近づいてみると「冬期凍結注意」。峠道は雪が怖い。当り前である。これを読んで気がつくような奴はそれまでに事故を起こしている。こんなことは各自が自分の判断で注意すればよろしい。ぼやいているその向こうに市町境の標識が見え、その向こうは下り坂だった。た。




写真427.中畑越え 
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 市町境、本項がいう「中畑越え」である。中畑集落から登ってきて、丸池あたりで最高点に達し、そこからほぼ水平に経緯した。その間、丸池だとか、水たまり状の池だとか、峠とは思えない状況がが続いたが、ここからは下りになる。市町境が最高点に一致する分かりやすい峠である。





写真428.中畑越え 
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 上の標識を日野町側から見たところ。甲賀市との立派な標識。手前が上りで向こうが水平だが、写真では向こうが下りに見えるかもしれない。曲がった向こうにヨシが見えるが、そこが下りなら湿地にはならずヨシは生えないはず。






写真429.二本杉 
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 市町境を過ぎるとすぐに下りになる。はっきりと感じられる下りである。グリーンBPのときもそうだった。市町境から迫谷川までの下りは劇的である。ここはもう日野川流域。
 目の前にそびえたつ2本の杉の木。もしこれが1本だったら、昔ありましたな。「別れの一本杉」。




写真430.下り行く 
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 小さなカーブを下っていく。時間はまだ2時過ぎだというのに、もう夕方の気配である。すぐに上迫の集落が見えてくる。右側(迫谷川の上流側)に立派なお寺が見える。







写真431.杉林のトンネル 
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 外へ外へと枝を伸ばし、道路に覆いかぶさる杉の木。おそらく道路に面して並ぶ木は全部この形なのだろう。それが結局トンネルに。本題とは何の関係もない話だけど。








写真432.迫谷川と出会う 
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 杉の木のトンネルを出て右に曲がると、太陽が真後ろから照りつける。迫谷川に向かっての下りである。川はわかりにくいが、突き当りT字路の手前、ガードレールがあるところが迫谷川。右側が上流である。







写真433.姫塚 
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 近づいてみると桜の木の下に碑が立っている。「姫塚」という説明板がついていた。何でも上迫城で戦いがありお姫様が自害をして云々という。碑の説明板と同じ向きの面は太陽が明るく、字が小さく読解不能だった。川側から見ると大きな字が見え、こちらが正面にも見える。だとすると碑と説明板があっちこっち勝手な方を向いていることになり理解に苦しむ。そしてその大きな字がまた読めない。「塚」はいいとして、上の字が問題。当然「姫」のはずだけど、私にはどうひねってみても「妙」ぐらいにしか読めない。



写真434.迫谷川 
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 迫谷川、上流を向いたところ。反対側、下流側を見たところ。もう1枚おまけ、「迫谷川」ネームプレート









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