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03.思川流域

0302D. 分水嶺・竜王越え、蒲生越え

取材:2014.06
初稿UP:2015.07.31


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  地図680.竜王越え・蒲生越え 関係地図(国土地理院Webマップ)
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 広野台越えを越えてしばらく甲賀・湖南の市境をたどったのち、242mのピークで市境を離れ、そのあと「春日西越」、「ソーラー越」、「春日越」、「八田越」をこえたところ。 前項でとにもかくにも「八田越」までたどり着いた。八田集落の背後にある206mのピークが甲賀市・竜王町の境にある。そこまでたどり着けば、後は市町境をたどれそうだ。  





地図681.竜王越え・蒲生越え 要所拡大地図(国土地理院Webマップ)
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 今回の関係道路は2本。1本は国道1号「さつきが丘」交差点からやってきた県道164号、地図のA点で左へ分かれてすぐに上りになる。「竜王越え」のあとは長い下りを経て竜王町山之上に達する。
 一方の「蒲生越え」は、地図のA点で県道から右に分かれ、ゴルフ場の銀座のようなところを抜けて東近江市(旧蒲生町)「鈴」交差点に達する。先の竜王越えは極めて単純、写真2,3枚で事足りるが、こちらの蒲生越えは一筋縄ではいかない。今後どういうことが起こる変わらないが、今まででいちばん面倒な峠だった。




7.竜王越え
写真681.Y字型分岐
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 春日交差点から県道164号を北上するとY字型に分岐に出会う。地図681のA点である。左が県道164、右も県道かと思ったがそうではないらしい。そのまま行くと国道477号の蒲生町「鈴」交差点に出る。写真はその分岐点。左、軽トラが連なって走るのが竜王越えへの県道である。分かれたところからゆるい上りになる。





写真682.右カーブ
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 緩い右カーブ。峠へ向かう。両側が山で何の変哲もない道である。

  写真683.峠近く
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 すぐに峠が近づく。









写真684.あっという間の峠越え
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 あっという間の峠越えである。分水嶺は竜王町との市町境。峠の前後は上り下りがはっきりし、市町境も標識で明快。これ以上単純な峠はないだろう。峠を越えてからはまっすぐな長い下り。「アグリパーク竜王」の近くへ出る。







写真685.峠細見
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 地理院地図を見ると、峠の部分で妙な道が記載されている。何がどうなっているのかと不思議だったが、よく見ると木の間に見えている建物への進入路らしい。個人のものでもなさそうだし、よくわからない。







8.蒲生越え
写真681.Y字型分岐
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 県道164号、地図681のA点に戻る。左が県道164、右も県道かと思ったがそうではないらしい。名神竜王カントリークラブの標識が見える。道はがゴルフ場の間を縫って国道477号の蒲生町鈴に出る。







写真691.A点分岐
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 A点で県道164号を分岐したところである。県道の登り坂を強調したかったので、長いレンズを使ったため絵がデフォルムして写っているが、手前のガードレールがこれからたどるクルマ道(しっかりした道だが県道ではないらしい)である。上と同じ「名神竜王CC]の標識が見える。





写真692.麦畑
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 地図681のC点に近いところである。山間農地に麦畑が広がる。坊谷川が水源地に向かって右側の山影を流れている。その岸から麦畑越しに反対側を走るクルマ道を見たところ。段々畑というほどではないが、畑が1枚ごとに高くなっていき、道がそれに従って上りになっている。







写真693.緩い上り坂
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 地図681のC点あたり。ベアズバウジャパンCCの中に伸びていく麦畑からクルマ道を見たところ。麦畑は水平。クルマ道はわずかに右上がり。当然、峠は写っている坂道よりまだ右ということである。






写真694.田んぼの峠
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 地図681のC点のあたり。ベアズバウジャパンCCの方から、象の鼻を思わすような山間農地が下ってくる。その付け根に当たる部分の直線水路である。実はこの水路、水はほとんど動いていない。この写真は下流(野洲川流域)から撮ったもので、土嚢を積んで水を止めている。たまった水をよく見ると上流の方へ動いている。水が上流へ動くなんてことはないわけで、すでにこの時点で、ここが最高点(田んぼの峠)、言い換えれば分水嶺というわけである。この直線を奥へ渡り切ったところでは間違いなく水の流れは逆(日野川に向かう)になっていた。でありながら、写真693に見るようにクルマ道はまだ上りである。



写真695.道路の峠
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 麦畑と水田の境あたりからクルマ道を見たところである。赤いトラックが止まっているところが道路でいちばん高いところ。走っているようにも見えるが、道路わきにちょっとした空き地があり、運転手が休憩していたのだろう。そこを望遠で狙うと明らかにその様子がはっきり見えた。手前が上りで向こうが水平に見えなくもないが、杉の写真を見てもらうと向こうが下りであることがはっきりする。




写真696.赤トラの後ろ側
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 赤トラの後ろ側を見たところ。田んぼを基準に見れば上りの加減が見えるはずだが、横から見ているのでもう一つはっきりしない。









写真697.上り坂
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 それで赤トラが出ていった後、その場所から斜めに狙ってみた。場所の位置証明は後ろに見えるゴルフ場の連絡橋(緑色の橋)である。この写真ではわかりにくいが、田んぼが向こうへ行くほど低くなっている。その田んぼに沿いながら道が上ってくる。参考のために反対側から見た写真をどうぞ。田んぼが畦道の高さ分ぐらいずつ高くなっていくのが見える。赤トラがいた場所は、クール宅急便の陰、右へ曲がってもう一度左へ折り返す場所である。




写真698.戸籍上の峠
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 田んぼの最高点はC点。クルマ道の最高点はD点。じゃ、肝心の市境はというと、「名神竜王CC]の出口あたり。道が「人」型に分岐しており、蒲生町側への出口のそばに小さな橋がある。田んぼの峠あたりから流れて来る川で、昭文社の道路地図には「須川」という名称が見える。すぐ下流の東近江市鈴あたりで日野川へ流れ込む。その橋を越えたあたりに「東近江市」の標識が立っている。当然反対側に「甲賀市」のがなければならないはず。あたりをきょろきょろしたが見つからなかった。ちなみに道の最高点からは約450m日野川より。どう考えても峠だとは思えない場所だった。
 ということで、ホンマの峠はどこか。クルマで走る限りはやっぱりD点(赤トラがいたところ)である。これは間違いない。

 おそらくこれは道を作った時にできた峠だろう。と考えてみると田んぼの最高点も人工的なものではないかと思えてくる。かといってぐんと標高を下げた現在の市境、これも自然の分水嶺をたどっているとも考えられない。周りはどっちを向いてもゴルフ場。これも自然の地形のままではないだろう。次の「お遊び」を実行してもらえばわかるが、野洲川から日野川まで峠を越えて川がつながっているのである。いよいよもって「怪」。地図の通りの市境を「蒲生越え」とした。

 ■ここのところは簡単な記述で説明できるところではない。0300D2-2. 坊谷川分水界・2で詳述している。


◆大問題発生・さてどうする

 「川をまたがない一本の線」、これがこの企画のテーマであった。天から降り注いだ雨が、今の場合でいえば野洲川へ流れるか、日野川へ流れるか。その流れが定まるまでのいくばくかの距離、そこには川がないゾーンがある。必ず一旦流れが途切れるエリアがあるという大前提があって成り立つ遊びだった。ところが今歩いた坊谷川・須川に関しては、2つの川がつながっていた。もうこの遊び自体が成り立たないのである。

 じゃ、やめるのか。・・・・何回も書いてきたが、「えらいことをやり始めた」というのが、正直な気持ちである。本来ならばやめるべきなのだろう。しかしここまで来たのだからという思いもある。水はあったけれども止まっていた。赤トラが止まっていた場所は明らかに峠だった。すべてが理屈通りということはない。理屈に合わないことがあるから面白い。やっぱりもうちょっとやってみようか。



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