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03.思川川流域

0301. 分水嶺・十二坊連山南東部

取材:2013.03
初稿UP:2013.12.30


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0.概観
地図01 十二坊連山分水嶺 (国土地理院Webマップ)
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 左の地図は、前項「独立小河川」で述べたように、高田砂川、榎川、大砂川などの小河川が十二坊連山の南西斜面からの水を受け止める様子を示している。この分水嶺が一方では湖南市と竜王町の市町境界線をも兼ねており、非常に分かりやすい構図である。
 さて、問題はここからである。地図の右下に見える十二坊山頂を目の前にして、市町境界線が分水嶺をほったらかしにして、さっさと山を下りてしまうのである。下りてしまったあと、何かそれなりの意味があるのかというと、素人のわたしなどがどう考えてもその理由が納得できない。もっともいまここで問題にしているのは分水嶺であって、市町境界線ではないのだから、納得できても出来なくても大したことではないのだが。









地図02.十二坊南東斜面地図 国土地理院Webマップより
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 さて、市町境界線から離れた分水嶺のその後である。それでも十二坊の山頂まではどうにかこうにかたどりつく。ものの本によると、このように分水嶺が山頂目前まで近寄りながら、すっと山頂を巻くように離れていく例もあるとか。なんせ市町境界線の例があるから、この場合も山頂がソデにされているのではないかと注意したがそんなことはなさそうだった。
 と、こともなげに書いているが実は分からないのである、十二坊山頂あたりからの分水嶺が。正直、えらいことを始めたと内心お手上げをしたい気持ちである。






写真000.十二坊南東部
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 たとえば左の写真は、十二坊連山南東部を北から見たところである。場所は湖南市菩提寺と正福寺の境あたり、国道1号バイパスと高田砂川とがクロスするあたりである。
 画面左の高いところが山頂周辺。その後谷を挟んで再び標高を上げていることが見てとれる。もう1枚(写真000A)。つぎは甲西大橋南詰野洲川運動公園あたりから。画面中央少し右に車谷川沿いをさかのぼる林道が見える。これが磨崖仏を経由して十二坊温泉越えに通じる。
 こうなってくれば、素人が等高線をにらんで解決できる話ではない。ヘリコプターで飛んでみたい気がするが、実際には不可能な話。頼りはカシミール3Dである。



地図03.十二坊南東部立体図 カシミール3Dによる描写
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 左はカシミール3Dによる十二坊南東部の立体図である。山頂からA点まではまだ何とか市町境の延長のようなムードがある。問題はその後である。そこから一気呵成にそのままB点までまっすぐ下ってしまうようにも感じられるし(黄色の破線)、そうでないように思われる。要するにこれで間違いないという回答が書けないのである。






1.十二坊温泉越え

 そんなことで、十二坊の南東部を横断する道路を走ってみることにした。湖南市工業団地から十二坊山中の「ゆららの湯」を経て甲西北中学の近く、県道27号甲西大橋北詰交差点に至る道。地図02で茶色で示した道路である。写真000はその部分を北西側から見たところであるが、中央部に見える谷筋を抜ける道路である。この道路上での分水嶺はどこか、それを確かめたらおよその見当がつくと考えたからである。


写真101.十二坊温泉入口
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 もちろんその道路を走るのは初めてではない。でも無意識で走るのと意識して走るのとは違う。日枝中学近くまでは比較的低いところを走るが、右へ曲がり善水寺への道を分けたあたりからぐんぐん上りになる。
 ここは十二坊温泉入口のT字路である。左へ行けば温泉、直進すれば甲西大橋へ。写真では分からないが、画面奥に向かって上りになっている。




写真102.左へのT字路
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 少し上ると左へのT字路があって、「磨崖不動明王0,7Km」とある。「車谷川を遡る」で述べた磨崖仏がある谷への入り口である。念のためと思ってこの道を磨崖仏のところまで下ってみた。T字路を左折してすぐ右へ曲がり、直後に軽く上りになってあとは一気に下っていた。その谷の流れは思川に合しており、その谷筋が野洲川流域であることは紛れもない事実だった。





地図04.十二坊温泉越え付近
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 しかし、いま走っている道は工業団地側であって、この道へ入るとき茶釜川を渡ってきた。以来、坂は上ってきたが峠は越えていない。ということは細かい話ではあるが日野川流域のはずである。そして上の写真のように目の前を行くクルマがまさに峠にかかろうとしている。この峠こそが分水嶺(十二坊温泉越え)である。






写真103.峠・十二坊温泉越え1
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 道路が勾配を上りきったところ、右へ入る道(十二坊山頂への林道入り口)が見えるだろうか。峠を越したクルマは足下から沈んでいき、向こうから上ってくる車は天井部から姿を現す。まさに「地球は丸い」のミニチュア版。ここがちょっとした峠である。

  写真103A.峠・十二坊温泉越え2
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 何で同じ写真が2枚もと思われるはず。撮影場所も写真103と同じ場所である。”十二坊温泉越え”を越えて、道が下っているところである。というとこのまま甲西大橋ヘ向かって下っていくように受け取られるかもしれないが、実際には一旦下った後もう一度上りなおし、そのあと甲西大橋へ下る。勾配を上りなおして、山際へ消えていくトラックの荷台が見える。



1A.十二坊山頂まで

 以上のようなことで、十二坊温泉「ゆららの湯」近くの峠が、分水嶺であることがほぼ確定した。とはいうものの分水嶺という連続した線上の1点が確定しただけの話しである。それも100%間違いがないといえるほどのものではない。この際、一度山頂までの道を確かめてみることにした。

写真104.林道入口
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 林道入口である。ここを右折して山頂へ向かう。通行止めの標識が見えるが、道は開いていると・・・とよく見ると鎖できっちり封鎖されている。入口ではシャットアウトだが、アンテナ補修用の車は通るはずだから、道そのものは大丈夫のはず。ここから山頂まで約2Km,標高差200m弱の登りである。





写真105.日陰の道
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 道は山の北東側を巻くようについている。道が影になっている。

  写真106.直線道路
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 道が左へ曲がり太陽が後へ回ってくる。










写真107.北東側の展望
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 どこかこのあたりで竜王町側が見えた記憶があったが、木が伸びて展望がきかない。やっと一箇所・・・見えた。遠くに雪の山。伊吹のような、そうでないような。ひょっとしたら霊山かな。もう1枚。






写真108.あずま屋休業中
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 おもいがけずあずま屋に出くわす。人が近寄ったとも思われず、休業中よりも廃業に近い。暖かくなればハイキング客が来るのだろうか。








写真109.三差路
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 右から林道が合流して来る。八重谷越えから稜線沿いにやってきた道である。ここのところは、何となく記憶に残っていて懐かしかった。左へ行くと山頂である。


  写真110.アンテナ群
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 逆光の中に、山頂のアンテナ群が見えて来る。








写真111.太陽電池
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 さすがアンテナ銀座、必要な電源は太陽電池で・・・。と、感心して表へ回ってみると、何と・・・、手の込んだことをしたことよ。最初の設計のミスやね。

  写真112.山頂の砂山
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 トイレの写真を撮って、後ろを向いたところである。山頂の砂山が見える。女性が2人休んでいる。








写真113.三角点
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 山頂の三角点。妙な形である。最初見たときは碁盤かと驚いた。うかつにも碁盤の下の構造を確かめてこなかった。しかし、なんぼものずきでもこのような形の三角点は作らないだろう。最初は碁盤の上の面と土地の表面は一致していたのだろう。それが浸食されて土地が下がっていった、と考えるとつじつまは合う。例のトイレが下に見える。
 とにかく山頂の三角点に着いた。出発点の”十二坊温泉越え”を出てからここまで、道路は登り一方だった。念を押せば、峠は越えていないということ。山頂を越えた分水嶺はこの道路とクロスしていないというこである。上の地図03で、山頂からから一気呵成に麓のB点まで駆け下る(黄色の破線)ことはあり得ないということがはっきりした。



写真114.水口方面の眺望
水口方面をパノラマで。

 ”十二坊温泉越え”から山頂までの道路は峠を越えなかった(分水嶺とクロスしなかった)。これが分かったから、あとは遊びである。山頂からは水口方面がよく見える。気持ちがよかった。


  写真115.展望台入口
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 山頂からは水口方面はよく見えるが、三上山は見えない。それは分かっていた。山頂を少し下ったところに展望台があったはず。確か苦もなく見つかったはず。しかし、それが・・・・ない。方々探し回ったが、木が茂っているだけで展望台があるような広場そのものが見当たらない。方々探し歩いて、林の中へ入っていく遊歩道のなれの果てに目がとまった。多分道標がついていたであろう支柱も残っている。


写真116.展望台
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 昔の記憶をたどりながら林道から山道に入り、分け入ること200mあまり、やっと見つけたのはこんな状態だった。その上で男性が一人弁当を食べていた。こんなところに人がいるなど想像も出来ない雰囲気だった。黙って近寄るのも気が引ける状態で、わざと音を立てて近づく。
 「この展望台も今はほとんど誰も知りませんのでね・・・」。それはそうだろう、何の案内もないこんな場所を見つけること自体不可能だ。私はその存在を知っていたから見つけられたけれども。


写真117.三上山
三上山・菩提寺山をパノラマで。

 展望台からの三上山はほとんど変わっていなかった。左の写真をクリックしてパノラマ版を見ていただくと、三上山の左に菩提寺山が見え、その左、野洲川頭首工を越える1号バイパスの高架橋が見える。その左が石部、栗東の丘陵地帯。
 ちなみに、この展望台からも次に見る「夏至の夕日」が見えるはずである。もっとも夕日よりも、展望台を見つけることのほうが難しいかもしれないが。




写真117A.夏至の夕日
三上山・菩提寺山をパノラマで。

 三上山に落ちる「夏至の夕日」である。1979年6月22日の撮影。三上山を撮りだして3年目の夏であった。八重谷口からの十二坊林道は全通しておらず岩根の集落から山頂へ登った。アンテナ銀座のいまと違って、当時山頂にはNHKのアンテナがたった1基建っているだけだった。地図で確かめただけのぶっつけ本番だったが、アンテナの背後へ回って三上山が見えたときは感激した。
 すべて計算どおりだったが、たった1つ、三上山が湖西の山並みより低くなることは予想もしないことだった。八重谷口から上った林道からでは三上山が高く見えた。カシミール3Dはおろか、パソコンそのものが存在すらしなかった時代、太陽が直接三上山に沈むことを想定していたが、それは果たせぬ夢だった。


写真118.十二坊温泉T字路から
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 十二坊温泉に戻る。行くときは前ばかりを向いていて気がつかなかったが、下り行く道の向こうに雪をかぶった綿向山(1110m)が思いのほか高く見えた。







2.にごり池越え

 とにもかくにも、十二坊温泉近くの十二坊林道入り口が分水嶺らしいということがわかった。しかしそのあとが全く分からない。とはいえせっかく始めたものをここでボツにするわけにもいかない。で、逆算で行くことにした。高校時代、理科や数学の問題が解けないとき、巻末の解答結論だけを見て、それから逆算すると何とかなることがあった。あの手である。
 いまはっきりしていることは、十二坊連山がここにおいて一旦平地に下るということである。その下る先が湖南市と竜王町との市町境、であれば話は簡単なのだが、それはすでに十二坊山頂を前に妙なところへ行ってしまっている。だからそんなことにこだわっていても仕方がない。これだけは絶対であるというポイントが探せないか。
 十二坊山麓を湖南市から竜王町へ越える道がある。国道1号バイパス岩根交差点から湖南工業団地へ抜ける県道13号(地図02参照)と書くと湖南工業団地は竜王町にあるように聞こえるが、ここはまだ湖南市である。だからこのあたりの市町境はややこしい。竜王町へ入るのはまだこの先、下田を越えて国道477号につながってからである。 その県道13号、たしか池があってそのあたりが峠になっていたはずだ。とりあえずそのあたりを歩いてみることにした。


写真201.にごり池まで・1
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 国道1号バイパス岩根交差点に立って十二坊のほうを見ると田んぼが一段高くなっているのが見える。それが思川の堤防だと近づくと単なる田んぼの段差。これはその段差に上ったあたりから見た県道13号である。トラックの後ろに見える交差点が、県道27号の旧道との交差点。水平だった道がそこから上りになるのが見える。
 右、トラックの後方に見える建物がホテル・サンクレスト甲西。



写真202.にごり池まで・2
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 県道27号の旧道との交差点近くまで進んだところ。そこを境に上り勾配になることが感じられる。が、よく見ると軽自動車を先頭に走ってくる対向車線の6台目、そのすぐ後ろあたりで道路がいったん浮き上がり、そのあと少し下がっているのが見える。実はその浮き上がったところが思川に架かる橋なのである。だからにごり池への峠越えの坂は左車線のトラックの後ろにつく軽自動車のあたりから始まることになる。




写真203.にごり池まで・3
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 ホテル・サンクレスト甲西の前あたりからにごり池交差点のほうを向いたところ。途中、赤信号で車が止まっている。それまでの勾配は緩く、そこでもう一段勾配が強くなっている。もう1枚(写真203A)






写真204.にごり池交差点
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 いごり池交差点である。写真ではわかりにくいが、国道1号朝国からやってくる道が、斜めに(「人」字型に)合流してくる。右奥に柵が見えるがその奥が池である。地図には名称が記載されていないが、これが「にごり池」であろう。
 道路の勾配は変わらずそのまま上り続ける。池側から見るとその様子がよくわかる。画面右端にビルと重なって大きな木(楠かと思われる)が立っているが、そのあたりが峠のようである。ひょっとしたらこの木は峠を象徴するものなのかもしれない。近寄ってみれば、何らかの表示があるかもしれない。


写真205.峠・にごり池越え
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 峠に何も表示があるわけではない。ただの道路が坂を越えているだけである。たまたまそこに「スギ薬局」の広い駐車場があって、水平になった道路を真横から見ることができる。たまたま甲賀市のバス「めぐるくん」が時間調整のために停車している。この分水嶺が甲賀市と竜王町との市町境であるならば、市バスが越えることはないはずだが、ここの場合に限って、前述したように市町境は峠を下った下田あたりを通っている日常生活に埋没し、誰も何も考えない風景だけれど、考えてみると不思議な光景である。
 道路の向こうの木が、池の向こうから見た仮称「峠の木」である。



写真206.峠・にごり池越え
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 上の写真はスギ薬局の駐車場から、にごり池越えを真横から撮った。どう見ても峠越えには見えない。ただの水平線である。こんどは道路方向から。にごり池交差点から340m離れた小砂町交差点から見たところ。遠くの信号がにごり池交差点。峠までの距離はおよそ100m。右がスギ薬局、左がにごり池である。
 この峠が分水嶺(にごり池越え)。坂を上ってくるトラックは野洲川流域から日野川流域へと分水嶺を超えている。峠の表示もない。市町境でもない。1日中このように車が行きかっているが、この峠が分水嶺であることを意識しているドライバーはおそらく皆無であろう。



3.細道越え

 さてもう一度、地図02.十二坊南東斜面地図を見ていただこう。「にごり池越え」のすぐ北西側に、梅影町から岩根中央(3)へ抜ける細い道がある。私はここを「細道越え」と呼んでい。その場に立てば近くに住宅地があるとは思えないひなびた雰囲気が残っている。「にごり池越え」が分水嶺であるとするならば、この道もまた分水嶺でなければならない、そんな関係が読み取れる。

写真301.T字路
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 小砂町交差点から北西へ170mほど緩い勾配を上ったT字路である。黒の軽自動車が住宅地から「細道越え」へ向かうところ、道路は緩い上り坂である。








写真302.道幅半減
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 先ほどのT字路から200mほど進むと、道幅が一気に狭くなり、半分以下、いやそれ以下の狭い道になる。そこまでの広い道の勾配はほとんど水平に近い上り。水平に見えるが、もし水を撒いたり、雨が降ったりしたら、やはり手前のほうへもどってくるだろうなというような、いわば感覚的な上りといえばいいのか。ところがもう1枚の写真を見るとわかるが、その狭くなったところで急に下りになり、一気に下の住宅地まで下ってしまう。やっぱりそこが1つの峠であることには間違いない。



写真303.下り坂
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 峠に近いところまで進んで、下り坂を見たところ。散歩途中の2人の女性を軽自動車が追い抜き坂を下っていくところ。右の砂地は、写真302で、右手に向かって30度ぐらいの勾配で登っていく斜面である。それが峠とぶつかっているわけで、いわば分水嶺の尾根が下ってきているところである。





写真304.分水嶺に建つ
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 上の写真で2人の女性が歩いているところあたりに立って、右のほう、坂の上を見たところである。一向に上りこう配に見えないが、上に立っている住宅を見ればこの道路が結構な上りであることが見て取れるはずである。ここが分水嶺である。道路を流れ下ってきた水は、カーブミラーの手前の側溝を見ると左へ下っていくようである。しかし、上の写真で分かるように、カーブミラーあたりまではのぼりであるから、大げさな言い方をすれば画面の右外へ落ちた水は日野川へ流れ着く勘定になる。カーブミラーの背後の住宅は、いわば分水嶺に立っているということになる。屋根の様子を見るとうまい具合に棟が分水嶺の方向と一致している。玄関側へ落ちた水は野洲川へ、裏口へ落ちた水は日野川へ。そんなロマンに満ちた家だということを、お住まいの方はご存知かどうか。


写真305.バイク吹かせて分水嶺へ
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 先ほどの女性が下って行った道を下から振り返って見ているところ。急こう配であることが自ずからお分かりいただけるだろう。もっとも先ほどのカーブミラーのところが分水嶺であるということと、この下り坂が急こう配であるということとは何のつながりもないことではあるが。そんなことを考えながらボケーと立っていたら、元気のいい兄ちゃんがブイーンとエンジンを吹かせて坂を上って行った。その兄ちゃんがいままさに分水嶺を越えようとしている。



4.善水寺越え

 十二坊の南東麓といえばいいのか、岩根の集落のすぐ上手、標高210mぐらいのところに善水寺というお寺がある。石部の長寿寺、常楽寺と組んで湖南三山として、紅葉めぐりをする人が増えた。


写真401.善水寺まで
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 地図を見ると集落から細い道がついているので、歩いての参詣ではその道を登るのだろうが、クルマで行くとなるとちょっと面倒なルートをとることになる。甲西大橋・工業団地のいずれから入るかはともかくとして、十二坊温泉越えルート、すなわち地図02の茶色のルートをとることになる。いま仮に工業団地側から入るとすれば、日枝中学の前を経て直角に右に折れる。そのあとすぐに左折する道があって、それが善水寺への取りつきになる。(地図02での緑の道路)



写真402.ヴィラ十二坊
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 緑色のルートに入って少し行くと右側に「ヴィラ十二坊」という老人福祉施設が見えてくる。写真では道路が水平で建物が傾いているように見えるが、実際には道が峠へ向けての登り坂を詰めているところである。







写真403.水槽工事中
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 ヴィラ十二坊を過ぎて、道が左へカーブしだすと水槽が見えてくるはずだったが、逆光の中に見えてきたのは、工事中のネットと背の高いクレーン。1980年前後、八重谷口からの林道が全通していなかったころ、この道が山頂へ登るルートに当たっていて、道のそばにある水槽を見上げた記憶がある。もちろんそのころは車1台がやっとの細い道だったが。バイクだからよかったものの、車だったら厄介なことだった。
 道は水槽の手前までが上りそこで水平になる。




写真404.善水寺越え1
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 工事中の水槽を通り過ごしたところである。タンクの敷地は城壁のように張り出している。タンクを設置する場所だから当然水平のはず。道路はちょうど城壁の前を通り過ぎるところだけが水平になっており、それを過ぎたところで下りになることがわかる。すなわち水槽が道路でいう峠の最高点に建っていることになる。地図で見ると、1つ下の細道越えのすぐ上に位置し、にごり池越えから分水嶺がつながっていると考えられる。はじめこの場所を「水槽越え」としようかとも考えたが、せっかくそばに善水寺があることだからと、その名前を拝借し「善水寺ごえ」とすることとした。



写真405.善水寺越え2
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 写真404の撮影位置からさらにバックしたところである。右側に「国宝善水寺駐車場」との看板があって、その反対側に左へ下っていく道が見える。そこを下ると500m足らずで善水寺である。
 同じ場所から見た工事開始以前の水槽(2013年6月撮影)。





5.この稿を終えるにあたって
 地図05.十二坊南東部立体図 カシミール3Dによる描写
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 以上のようなことで、とにもかくにも十二坊南東斜面の分水嶺をたどってみた。正直なところまったく自信はない。何かの間違いでこの通りだったとしても、単なる偶然であって本当にそうだったのかと驚くだけである。
 前稿、「車谷川を遡る」のUPが6月1日、半年以上空いてしまった。その間、8月下旬の近代美術館での4教室合同写真展の準備や後始末で結構時間がとられたのが主たる理由であるが、年齢のせいか仕事のペースが下降気味なのも隠せない事実である。とりあえずこれをもって今年の最後の稿とする。



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