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N03.思川流域

N0300D2-2. 坊谷川分水界・2

取材:2014.06
初稿UP:2014.12.31


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6.再びB点へ

 メモリーのトラブルから水源域探訪が中断した。
 再びB点へ。


地図02.坊谷川水源域・最初考えたこと (GoogleMapをベースに必要事項を追加した)
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 このときまで坊谷川水源域は名神竜王CCの連絡橋下と信じて疑っていなかった。したがって、前回踏査したときも水の流れに関心を持つことはなかった。溝程度の河道にはヨシなどが生えており、流れそのものが見えないこともあって、当然水は自分が歩く向きと逆向きに流れているものと信じ切っていた。そして再びB点へ。前回中断したところである。








写真243.驚きのB点
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 これは前項最後の写真である。B点に立って、仮想水源地(トラックの後方、手前の森の奥)を向いて撮ったものである。当然水は画面奥から手前のほうへ流れてくるはずである。しかし、今回改めてここに立って、ふと見ると驚いたことに、水は手前から奥へ流れているのである。何? そんな馬鹿な…。

 仮想水源地は仮想には違いはないが、正直のところ、ほぼ100%それに間違いはないと信じていたから、今の今まで水の流れの向きなど気にしてはいなかった。大体分水嶺だとか水源地だとかは、川を遡る場合、それに至るまでは、向こうから自分のほうへ水が流れてくるのが当たり前。流れの向きが変わるなんてことあるはずはないのだから。ところがその向きが変わったのである。



写真244.AB間
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 だとしたら、すぐ後ろのAB間の直線水路はどうなっていたのか。改めて覗いてみた(写真244A)。水はある。しかし動いているのか止まっているのか・・・・、じっと見ているとごくわずかにA点からB点の向きに動いている。
 尾根筋を挟んで水が途切れる、人間の力ではどうしようもないのが分水嶺だと考えていたが、ここでは流れの向きを人間がコントロールしている。野洲川と家棟川を結ぶ、祇王井川でもそんなことはあったが、それはうんと下流の平地での話。こんな丘陵地帯でそんなことが行われているとは思ってもみないことだった。



写真245.B点
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 上の写真243はB点付近の状況を単純に撮っただけものである。水の流れの向きなどは何も考えていない。左の写真245は水の流れを意識して撮ったもの。現実には、スチール写真で水の流れの向きを表現するのは不可能だったが、拡大してもるとごくわずか表面の波模様が読み取れる。
 上の写真244Aに見るように、AB間の水は動いていない。しかしB点からは明らかな流れとして出ていく。どこか別のルートで水が流れ込んでいるはずだ。



写真246.B点への流れ
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 改めてB点に流れ込む水をたどってみた。
 地図03(国土地理院Web地図)によるとB点からみて、クルマ道の奥に貯水池がある。そこから流れてきた水がクルマ道をくぐって出てきたところ。







写真247.農道沿いにB点へ向かう
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 クルマ道からB点を見たところ。(上の写真の位置でカメラを90度右へ振った)。左から水田、農道2(突き当り、森の手前がB点)。その間を流れるのが、クルマ道沿いから直角に折れて来た流入水路。この間の水路はGoogleMapには記載なし。国土地理院Web地図(地図3)には農道2沿いに記載されている。
 ついでに、農道Bの右が麦畑2、その奥、森にはさまれた麦畑3。




地図03.坊谷川水源域 (国土地理院Web地図)
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 国土地理院Web地図の任意の点をクリックするとその点の標高が読み取れる。従来の紙の地図では考えられなかったことである。左はそのWeb地図(25000分の1)をベースに、関連事項をかきこんだもの。
 クルマ道沿いの田んぼの標高をチェックしてみた。ほとんど標高が168mである。(麦畑A,Bは、農道A,Bによって区分けされているだけで、その中に何枚かの田んぼがある)。いくつかの点を場所を変えてチェックしてみたが、ほとんどが168mだった。A点、B点もクリックしたが両者とも168mだった。いうまでもなくAB間の水は動かないということである。もちろん現実問題としては、流れ込む水の量によって水面に高低差(おそらくcm単位のはず)が生じ、どちらかへは動くのだろうが。



写真248.農道Bから仮想水源を見たところ
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 念のためと思って、最初「仮想水源地」としていたゴルフ場の連絡橋の下をクリックしてみた。値は166mだった。168mに対して2m低い。たった2mという人もあるかもしれないが、cm単位の高低差が問題になる場所において、2mの高低差は大きい。
 農道Bを境にして水田に替わる。最初はほぼ水平、後半になると徐々に標高が下がっていく。写真は連絡橋の下を、東近江市(画面奥)側に向かって下っていくクルマ。最初このあたりが水源地と想定したが、完全な間違いであった。



写真249.田んぼの段差
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 農道Bから北の水田。クルマ道から見た田んぼの段差。連絡橋に近づくとこのような段差がいくつか続き徐々に標高が下がっていく。左が連絡橋方面。右が農道B方面。









写真250.連絡橋下から見る段差
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 写真248に見える連絡橋。右の木の陰に見える橋脚の横から、分水界を見たところ。水田が段をなして標高を上げていくのが見える。右端を走るクルマ道が、左へカーブしてガードレールが途切れるあたりに、小さな崖崩れの跡が見える。そこらあたりから農道2(水田の最高点)がつながっている。






写真251.途中、車の場所から
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 上の写真で右側に止まっている車のところから、畦道へ降りるスロープが見える。それが邪魔をしてその奥が見えにくい。左の写真は、車の横まで進んで、そこからその奥を見たものである。
 段差は目の前の数10cmと、その次とが顕著に見えるぐらいで、後はほとんど同じ高さで横並び、いわゆる標高168mゾーンに入っていくことが読み取れる。撮影時期がずれたため、麦はすでに刈り取られていた。刈り取り前なら、麦の色が見えたのではないかと残念である。




地図04.坊谷川水源域・現地に立ってわかったこと (GoogleMapをベースに必要事項を追加した)
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 名神竜王CCの連絡橋あたりが分水嶺だと考えていたが、それは間違い。この谷筋の分水嶺は農道A・B間の広い田んぼ。分水嶺というよりは分水界といったほうがイメージに合う。
 普通分水嶺というと、それを挟んで川は両側へ分かれていく。当然、分水嶺の両側には、水が流れない区間があると思い込んでいた。ところがここはそうではない。クルマ道から言えば峠(いちばん高いところ)に違いはないが、分水嶺から見れば鞍部(いちばん低いところ)というところである。だから、さらに高い所から水は流れ込んでくる。AB間のA側へ落ちてきた水は野洲川水系坊谷川へながれ、B側に流れ落ちてきた水は、日野川水系須川へと流れ落ちていく。そして運悪くというか、運良くというか、AB間に流れ落ちた水が、どちらへ流れようかと迷うところ。それがAB間の麦畑2である。

 以下付け足し、無理して読んでもらうほどのことではない。




写真252.田んぼの段差
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 上の地図で中央付近に、南北につながる水田がある。名神竜王CCにくさびを打つように入り込んで、ため池などから流れ出る水を集めてくる。その水が田んぼを横切って須川源流に流れ込む。そのための水路である。手前がクルマ道をくぐって田んぼ側へ出てきたところ。手前から奥(東近江市側、日野川流域へ)へ流れていく。





  写真253.田んぼの段差
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 90度右へ折れて畦道沿いに水田を横切り田んぼの奥を流れる須川源流へ。右が上流。


  写真254.田んぼの段差
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 合流した後、連絡橋の下で暗渠に入るまでの源流。ということだが、これが源流に見えるだろうか。うっかり見ると市街地近くの用水路のように見える。分水嶺とは言うものの、ことほど左様に人間の手の入った場所ではある。







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