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N03.思川流域

N0300C. 思川を遡る・甲賀市域1

取材:2013:04
初稿UP:2014.12.31


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1.思川橋から広野橋まで
地図02.思川中流域地図(国土地理院Web地図に加筆)
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 前項で野洲川合流点から湖南市域を遡ってきた。旧県道13号”思川橋”を過ぎたあたりで山間部へ入る。そこが湖南市と甲賀市の市境である。『近江輿地誌略』にあるように、”近江がた岩根のまへの思川、川上もなし川下もなし”のざれ歌が納得できるところである。市街地から急に山間部へ入る。しかし、このあたりはまだいい。山から水が流れ下ってくるのだから。市境を越えて、向こうに田んぼが見えてくると、ちょっと待てよということになる。水が谷間を遡ってくるように感じられる。峠を越えたのに水が逆流しているように感じられる。
 なぜこうなるのかよくわからないが、川はまさに「く」の字のようにクックッと曲がっては、いくらかの距離は直線ですすむ。一応ナンバーは打ったが、うっかりしているとどのカーブだったかもわからなくなってしまう。ざれ歌は単なるざれ歌ではない。不思議なところである。
 本稿でのレポートは上の地図の左半分、広野橋までである。広野橋を上流に向いて右手へ進むと国道1号”泉西”交差点へ出る。



地図101.思川市境概念図
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 湖南市と甲賀市の市境のうち、野洲川や思川が流れる部分を大まかに図に表わすと左の地図101のようになる。北に十二坊、南に烏ヶ嶽、その間をつなぐ朝国丘陵(私が勝手につけた名称)、これらが南北につながる。普通の常識なら当然これらをつなぐ線が市境ということになるはずなのに、なぜかそれらは湖南市域にすっぽりと収まって、市境はそれらの東側に設定されている。思川は朝国丘陵の北側で世間から隠れるようにしてひっそりと市境を越えるのである。



1. 思川橋
写真42.県道13号旧道
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 思川橋上から県道13号(旧道)。ここはまだ湖南市域。国道1号朝国交差点からにごり池へ向かう県道で、現在の13号が開通するまでは朝国から近江八面へのメインルートだった。それが「思川橋」という名称にうかがわれる。思川に架かる橋だから「思川橋」だろうといってはいけない。思川に架かる橋はこれ1本ではない。たとえば現在の県道13号の橋は「中島橋」というローカルな名である。その他の橋も私が知る限りでは全部ローカルな名称である。そんな中での「思川橋」。この橋がメインルートであったことが読み取れる。
 そんな状況の中で岩根からにごり池方面を見たところ。中島橋上から岩根中央あたりを見るのと何となく似た雰囲気がある。道がだらだら上りになるのがそれを感じさすのだろうか。



写真44.思川橋
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 思川橋を上流左岸から見たところ。左が朝国、右がにごり池である。バックの山はもちろん十二坊。

 以上、ここまでが前回の写真。以下100番台が今回の写真。





写真101.思川橋上から上流を見たところ
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 思川橋の上に立って(下の地図102、撮影地点A)、上流側を見たところ。ゆるーく左へカーブしながら上流へ。200mばかりで右へくっとまがって(下の地図102の第1カーブ)見えなくなる。岸沿いに歩けそうな道はない。







写真102.撮影地点Bから思川橋を見たところ
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 思川橋から上流左岸(上流から下流を向いて左、橋から上流側を見るときは実際は右側)を50mも歩くと竹やぶにぶつかり道はなくなる。県道13号のほうからぐっと大回りをして撮影位置Bへ出る。何や、こんなところかと拍子抜けするぐらいの近くに思川橋が見えた。







写真103.撮影地点Bから上流を見たところ
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 同じ場所から上流を見たところである。対岸の湖南産業の倉庫の一部が見え、その奥は竹藪が茂るばかり。そこで思川は右へ曲がるが(第1カーブ)が写真でははっきりわからない。この部分、写っているのは両岸とも湖南市域である。







2. 思川市境部(湖南市側)
地図102.思川市境部地図
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 思川が甲賀・湖南の市境を越えるところである。山間の隘路をくっくっとクランク状に折れ曲がりながら流れ下っていく。この項では、思川を遡る向きで進んでいるから、カーブのナンバーも下流から順に追っているが、実際には川の流れは南東から北西の向きに流れている。







写真104.撮影地点C近く
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 撮影地点Bの手前で右へ折れる道がある。そこを突き当り近くまで進んだところ。左側に「湖南製作所」という看板が見え、突き当りには地層が露出したほぼ鉛直に近い壁が見える。いつもいつもというわけではないにしても、ことあるごとに崩壊しているのであろう。
 突き当りは駐車場になっていて、つかつかと入っていって、右左をきょろきょろというわけにはいかない。さいわい右側に「坂本油化」という会社の敷地があり、手前のほうは使われておらず、空き地同様のイメージで、そこを歩いて撮影地点Cへ出る。




写真105.撮影地点Cから下流を見たところ
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 撮影地点C(上の写真の駐車場の奥)から下流側を見たところ。左へカーブしながら、流れ下っていくところが見える(第1カーブ)。そこまでの対岸はB地点から見たとおりの竹藪である。







写真106.撮影地点Cから上流を見たところ
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 撮影地点Cから上流を見たところ(赤い矢印の向き)である。地図102を見てわかるとおり、鋭角に曲がる第2カーブを曲がり切る最後のところである。外側(対岸)下部にちょっとした岩石によるテラスができている。この付近の思川を歩いてみると、同じ種類であろうと思われる岩石の露頭が見られる。多くは川底に見られ、ちょっとした落差工になっていたり、そこを避けて流れたりしている。
 ここでは普段の流量の時はこの岩盤がガードし、これを超えたときのみ、上の地層が侵食される仕組みになっているのだろう。




写真107.撮影地点Cから上流を見たところ
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 同じ場所からレンズを短くして、地層の露頭を見たところ。もう1枚。こちらの方が地層は見えやすい

 さて、湖南市側からはこれ以上は進めない。撮影地点CからDへ、早い話が川を渡ればいいのである。そのために朝国経由で国道1号へ出て・・・、そしてやってきた撮影地点D。




3. 思川市境部(甲賀市側)
写真108.撮影地点Dへ
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 D点は甲賀市水口町である。丘の斜面に広野台という住宅地が広がっている。その住宅地と朝国丘陵との間に農地が広がり、その一番低いところを思川が流れている。
 広野台の入り口の空き地に車を止めて、ふもとを巻くように700mほど歩くとD点である。写真はあと100mほどでD点というところ。軽トラ1台の農道が一直線につながっている。突き当りの林の右、写真では黒くつぶれてしまっているところ、その奥がD点である。




写真109.撮影地点DからCを見たところ
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 このシリーズを取材するにあたって、一番の難関はこの市境部分であることは初めから分かっていた。湖南市側からの詰めは後にして、実際には甲賀市側D点を確認することから始めた。全く未知の場所である。行ってみて目についたのが対岸の桜。何かの目印にはなるだろうと撮っておいたもの。そのあと湖南市側へ回って、写真104(「湖南製作所」の看板の奥屋根の向こうにサクラが見える)を撮った。その時点でも両方の桜が同じものとの認識はなかったが、帰って画像を確認しているうちに両者が同じものらしいことに気がついた。ということ、桜の右側、叢の陰になって見えないが、ちょうどそのあたりが撮影場所Cであるという勘定になる。




写真110.撮影地点Dから第2カーブを見たところ
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 写真108と全く同じ場所から右側を見たところである。何かはげた崖が見えるなぐらいの意識しかなかった。レポート写真の難しさである。
 市境を示す石標でもないかと探したが、何も見つからなかった。







写真110A.市境地点パノラマ写真
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 以上のようなことで、このあたりが思川と市境とのクロス地点であることは間違いないと考えられる。ならば、ランドマークの桜と地層の露頭とをつないだパノラマ写真がほしい。しかし前述したように、ここを撮影した時点ではそこまでの意識はなく、パノラマ用の撮影はしていない。無理につなげばというコマもあるにはあったが、結局改めて撮影しなおすこととした。桜はすでに散りはて、新緑の季節になっていた。情けないパノラマ写真ではある。



写真111.撮影地点Dから思川のほうを見たところ
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 D点付近写真108)の突き当りの林あたりから思川のほうを見たところ。堤防らしいものは見えるが、川の姿は一切見えない。林の中、ないしは林の向こうを流れていることは間違いはないのだが。農地も堤防もきれいに整備されている。






写真112.堤防の始点
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 上の写真では堤防が見えるのは左の3分の2ぐらいで、右側は藪の影になっているように見える。ところはこれ実はこの部分は堤防がないのである。うっかりしてああそうかと返事しそうだが、よく考えるとおかしな話である。堤防というのは同じ高さで延々と続いて初めて意味をなすもので、ここは大事だからと、特定の部分だけ高くしても意味はなさない。ここはその不思議な堤防の始まる部分である。




写真113.堤防上から見る広野台住宅地
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 前述したように、思川東側の台地に、広野台住宅地が広がっている。堤防から住宅地までの距離は120mほど。奥はずーと傾斜地でひな壇式に住宅が建つが、写真にはその勾配感は写らない。

  写真114.カーブする堤防
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 堤防というか、土塁というか、写真のような盛り土がなめらかに左へカーブしていく。







写真115.切れる堤防
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 で、よく見るとカーブしていくその先で堤防がスーッと消えていく。始まりといい終わりといい、これはやっぱりおかしいぞ。藪の中で思川がどうなっているのかわからないが、こんなに住宅地のほうへ向かっていくのもおかしいし。






写真116.堤防終わる
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 終わった堤防の外側へ回ってみる。何でもない普通の田んぼである。川は?、逆L型の田んぼの向こうに見えるのが思川である。決して高い堤防ではないが、写真109で見たように川は結構低いところを流れている。これで問題はないのだろう。






写真117.第3カーブ出口
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 堤防の左カーブが第3カーブによるものかと思っていたが、それは関係なし。緩くカーブして流れ出てきたところ。
 言い換えたら、写真109でちらっと姿を見せた後、土塁と林に阻まれて姿を見せなかった思川が、その後初めて見せる姿である。右岸はこうして、画面右奥の林でこれ以上進むことはできない。しかし左岸(対岸)は下流まで下れそうだ。ということでいったん上流の広野橋までさかのぼり、左岸を下ることにする。




4.第3カーブから広野橋まで
写真118.甲賀市側最下流
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 本稿の目的は思川をさかのぼることである。そしてさらに、分水嶺を超える峠越えを訪ねることである。その目的からすれば、いまやっていることは全く意味のないことである。しかし今回の市境部については、できる限り確認しておきたい。そんな思いを起こさす不思議なところだった。
 まあ要するに、下流側(思川橋畔)から左岸をさかのぼってきて、市境部の不通箇所に出くわし、大きく迂回してきて不通箇所をやり過ごし、再び川のふちへ出てきたところといえばわかりやすいかもしれない。道も、川も見えなくなる向こうが市境である。以下、広野橋まで左岸をさかのぼる(川は画面手前から奥へ向かって流れている)。



写真119.第3カーブ
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 写真118の撮影地点で後ろ(上流側を)を振り返ったところ。地図102の「第3カーブ」の途中から上流側を見たところである。








写真120.第3カーブ出口
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 写真117.第3カーブ出口の対岸である。117で水面に見えている白い泡状のものが吐き出されてくるのが見える。さらに117で右側に見えていたごみをまきつけていたのと同じ木が見える。ごみが水に流されてきて木に巻き付いたとすると、増水時には、地面ぎりぎりまで水があったことがわかる。





写真121.広野台住宅地
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 写真113で見た広野台住宅地である。ただし113は北西側から見たところ、この写真は第3カーブを回ったことによりほぼ90度方位が変わり、南西側から見ていることになる。いずれの写真も斜面に建つ住宅地の最下端を見ていることになる。ここから住宅地まで150m弱である。






写真122.十二坊遠望
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 振り返って十二坊を見たところ。


  写真123.一直線にくだる
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 広野台住宅地のふもとから一直線にくだってくる農道。










写真124.広野台入口
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 広野台入口の交差点を望む。


  写真125.広野橋
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 広野台入口からやってくる道が思川を越える。右へ行くと小さな峠を越えて国道1号「泉西」交差点に至る。








写真126.広野橋
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 広野橋左岸側。右へ行くと国道1号「泉西」交差点に至る。










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