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N01.大山川流域

N0108. 八重谷越え

取材:2013.02
初稿UP:2013.02.28


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1.八重谷越えのこと

 大山川分水界峠巡りも終わりに近い。最終回は「八重谷越え」。分水界としての対象河川は竜王町を流れる善光寺川。
 実は今まで使ってきた「○○越え」という言葉は、最初の「東光寺越え」以外は、私が勝手につけた名称である。しかし、この「八重谷越え」は国土地理院の地形図にも載っているれっきとした公称である。三上山の写真を撮りだした最初のころだったから、もう30数年前になる。新聞に「甲西町菩提寺から竜王町・竜王ICまでの八重谷越えが整備された」との記事が載っていた。そのとき、「八重谷越え」とはいい言葉だなと思った記憶がある。今回、訪れたそれぞれの峠について、「○○越え」を使おうとした最初のきっかけということになる。


地図01.八重谷越え関連地図  国土地理院Web地図より
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  八重谷越えは、左の地図のように、湖南市菩提寺と竜王町薬師を結ぶ県道22号が越える市町境の峠に当たり、横を名神高速道路が併走している。地図では竜王町側で道幅が狭くなっているように表現されているが、実際にはそういうことはない。湖南市側とおなじレベルの道である。
 分水嶺の立場からすれば、大山川源流を囲むいわゆる「子犬」のお尻辺り「鏡山新道越え」、「一本松越え」を経て希望が丘駐車場付近の「東ゲート越え」、さらには希望が丘青年の城あたりを経由して、十二坊に向かおうとする鞍部に当たる。







地図02.菩提寺地域の旧字名  『鈴木儀兵の菩提寺歴史散歩』より北半分を借用
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 上の地図01で、右の方、竜王ICの南に「八重谷山」(287m)という山がある。そんなことで、この「八重谷」という地名は竜王町側からつけられた名かと思っていたら、どうもそうでもないらしい。『鈴木儀兵の菩提寺歴史散歩』に、右のような「菩提寺地域の旧字名」という地図が載っている。笹尾ヶ岳の南東側に「八重谷」の字名が見える。右側が切れていて残念だが、多分市町境まで続くのだろう。そして同書によると、
 ・・・この山(笹尾ヶ岳)は菩提寺の東北に位置し、麓を荒川が流れ、山裾を今は名神高速道路が通っています。この道路に沿って八重谷越えの道があります。近江台から希望が丘東口への道で、この間に8つの谷があったことから、地元で八重谷と呼ばれています。
 中世の時代、八重谷の峠道は、竜王方面からの通り道でしたから、春と秋の彼岸には栗東高野の新善光寺へお参りする人で賑わい、峠にあった御茶屋も大いに繁盛したそうです。
 明治時代、この茶屋の近くに龍池藤兵衛さんが桜を植えられ、「藤兵衛桜」として有名になりました。・・・
 とある。何?中世? ホンマかいな。新善光寺てそんなに古いのかと調べてみたら、・・・”今から約800年前、源平の乱(治承の内乱)の後、云々”・・・とある。ハイハイ参りました。「新」の字に惑わされておりました。しかし、エエかげんに「新」をとらんといつまでもルーキーと間違われまっせ。新名神はなんぼ古なっても「新名神」やろうけれども。
 さて、問題は八重谷越えの道。今は片側1車線の県道で、クルマ専用道路の感、 峠の茶屋も今はない。第一、人の往き来がまずない。桜あたりは残っていてもよさそうなものなのに、それもない。咲いているのに、私が知らないだけかも知れないが。



2.もう1つの合流点まで
写真01.荒川谷・八重谷合流点
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 荒川谷からの流れと八重谷からの流れが合流するところ。いちばん上が名神の高架橋。その下の橋が荒川谷からの流れをまたいでいる。八重谷から下って来る流れは見えにくいが、手前の階段の延長線上から流入して来る。







写真02.八重谷からの流れ
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 大山川緑地(写真01の対岸)から上流を見たところ。画面右側、車が走っているのが、八重谷からきた流れにかかる橋。といっても実際にはほとんど水は流れていないが。


  写真03.八重谷から来た流れ1
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 写真02でクルマが走っていた橋から上流側を見たところ。通常は、川原を水がちょろちょろと流れているぐらい。






写真04.八重谷から来た流れ2
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 川の左岸、住宅街の方から対岸を見たところ。松の木越しに見えるのは、グループホーム「ぼだいじ」。


  写真05.住宅地側を見る
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 右岸、グループホーム側から住宅地を見たところ。










地図03.八重谷川合流 国土地理院Web地図
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 川の本流・支流は何によって決められているのだろう。たとえば左の地図の場合、見えている青い線はすべて大山川である。事実、八重谷越へ向かう県道には、信号「近江台」のところで橋を渡る。その橋には「大山川」の表記がある。上の地図01に見えるように、川の長さ、流域面積、水量など、どれをとっても希望が丘の奥地から流れ出る荒川谷が群を抜く。当然これが本流となってしかるべきだと思うが、左の地図03を見ると、その流れの線からは近江台住宅地横から流れ出るのが本流のように見える。いま歩いているのは荒川谷分岐から、信号「近江台」までである。直線距離にして500mほど。川の全貌を見るには右岸の方が分かりやすい。



写真06.右岸をさかのぼる
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 落差工の向こうに合流点が見えるが、遠くて判然としない。








写真07.合流点
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 合流点に近づいたところ。車が走っている道が八重谷越えへの県道22号。奥の住宅地が近江台。左のアシが生えているところが、八重谷川の流路である。今、水が流れているのは、ほとんどが八重谷川。写真02とほとんど同じ構図である。
 このあと川沿いに進んで信号「近江台」の上流100mほどの地点で県道に合流する。手前が県道、赤いクルマは八重谷越えへ向かうところ。向こう側、大きな岩が並んでいるのが川沿いをさかのぼってきた道。車両通行止めである。



3.八重谷越えを走る

 さて、八重谷越えへの道である。人が歩けるのは近江台住宅地まで。それからあとは自動車専用道路の感で、片側一車線の道路はクルマがびゅんびゅん通るだけ。人間が歩いている姿を見たことはない。歩道は全くなし、路側帯もほとんどないに等しい。ここをカメラを持って歩く勇気はない。また、仮に歩いたとしても道路を撮る以外にどれほどの写真が撮れるか。それなら車載カメラでやっつけても同じことではないか。ということで八重谷越えをひとっ走り。


写真08.住宅地内を行く・1
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 菩提寺平和堂近くの「みどりの村」交差点から県道22号を竜王ICの方に向かう。道はゆるい上り坂が続く。もう1枚。たとえばこれなど、住宅の敷地と道路との間の角度で上り坂の具合が分かる。正面の山は十二坊の北端。






 写真09.近江台交差点
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 カーブを曲がって信号「近江台」にかかるところ。ここも敷地と道路とに角度がある。
 信号を渡ったところで、大山川の橋を渡る。歩いてみて初めて気がつくぐらいの橋だが、近江台住宅地のそばを流れ下る川である。






写真10.近江台入口
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 上の写真で、信号名は「近江台」となっているが、実際はゴルフ場への入口。近江台への実質的な入口はこのT字路。これを過ぎると人が歩かない峠越えになる。
 写真を拡大してみると、前方、右へカーブし出すあたりに左側に黄色と黒、タイガースカラーの車止めが見える。これが写真07Aの河岸遊歩道と県道との合流点。





写真11.峠越え・1
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 ご覧のように人間が歩く余地なし。左の谷には水が流れているはずだが、木が茂りクルマからの確認は到底不可能である。


  写真12.峠越え・2
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 ところどころに、このような切り通しが見られる。









写真13.峠越え・3(十二峰林道入口)
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 右前に十二峰林道への入口が見える。十二坊山を縦断する林道。山の名は十二坊だが、林道の名称には「十二峰」の字が使われている。現在は全面通行止め。30年ほど前、工事中の林道から見る三上山は秀逸だった。山頂までは開通しておらず、まだ砂利道だったが、夏の夕方になると自然と足が向いた。次項で詳述。






写真14.峠越え・4
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 峠が近づいてくる。県道標識の向こう、切り通しの部分が峠である。









4.八重谷越え
写真15.八重谷越え
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 峠である。大山川流域から善光寺川流域に移るところ。国土地理院・標高が分かるWeb地図で199,7m。麓の写真09.近江台交差点で151.4m。その差、およそ50m。向こうの「竜王町」の標識が沈んで見える。トラックがまさに峠の最高点にさしかかろうとするところ。
 峠も切り通しになっている。右が十二坊のすそ。左、切り通しの向こうを名神が通る。クルマの中から名神は見えないが、地図で見ると、名神を越えた希望が丘側にこの尾根の続き(標高240m)が見える。切り通しが出来るまでは、はっきりした尾根の姿が見えたのだろう。『菩提寺歴史散歩』によるとかつてここに茶屋があり、桜の木が植えられていたという。いまは茶屋どころか人影すら見えない。




写真16.峠越え・5
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 峠の最高点あたりから「竜王町」の標識を見たところ。一見すると、標識の向こうが峠に見えるが、これは奥に向かって勾配がきつくなって、道路が見えないだけ。今見えている道路がすでに下りにかかっている。ここはもう善光寺川流域である。






写真17.峠越え・6
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  一気に下りにかかる。ずっと向こうは登りに見えるが、実際は下り勾配がゆるくなっただけ。手前が下りである。


  写真18.峠越え・7
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 竜王ゴルフコースのそばへ出る。











写真19.竜王ゴルフ分岐
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 左へ曲がれば名神の下を潜って三井アウトレットパークへ。右へ曲がれば竜王ゴルフ、下田方面へ。









写真20.名神を潜る
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 名神を潜って、左へ曲がれば希望が丘東ゲートへ。右へ曲がれば三井アウトレットパークへ。トンネルの右半分は川が流れる。道沿いに流れて善光寺川となる。








写真21.竜王ゴルフコース池
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 車を降りて竜王ゴルフコーのス池を見たところ。トラックは八重谷越えへ経向かう。
 クルマを避けながら写真を撮っていたら、わざわざ乗用車がすーと寄ってきて止まる。後に何台もトラックがついているのに、である。窓が開いて「向こうの橋のところにカワセミがおるよ」。そういえば峠から下りてきたときに、そこで長いレンズを振り回しているご仁がいた。何を撮っているのかと思っていたが、どうもその人らしい。「ありがとうございます」と返事はしたが、私は目的が別でして・・・。




写真22.竜王ゴルフコース池
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 地図01を見て分かるように、この池へは、希望が丘東ゲート付近、例の一本松越えあたりから2本の川が名神を潜って流れ込み、再び名神を潜って善光寺川へ流れ込んで行く。








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