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N01.大山川流域

N0106B. 南ゲート尾根道

取材:2013.01
初稿UP:2013.01.30


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1.笹尾ヶ岳丘陵群

 希望が丘文化公園の中央道と家棟川・大山川の分水嶺、ここでいう「中央道越え」を前回確認した。その分水嶺は、希望が丘の西ゲート付近から南に続く天山・笹尾ヶ岳の尾根を経て両川の水源地付近へ下るものである。ということで、今回の主役は笹尾ヶ岳。
 前々回の主役、天山の東に位置する山で、一見続きの山体のように見えるが、両山はいわゆる「甲賀坂(南ゲート越え)」で歴然と区分けされている。


写真31.笹尾ヶ岳丘陵群
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 上の写真が笹尾ヶ岳丘陵群である。この名称は私が勝手につけたもで、ご覧のように笹尾ヶ岳をピークとする丘陵群というぐらいの意味である。実際に見た目には、こんな大げさな名がつく山ではない。だいいち、「岳(嶽)」と「山」は何によって区別されるのか。標高251mのこの山が何で「岳」なのか、それが分からない。それでいて1000mを超える御在所が「山」だという。
 ぼやいていても始まらない。まず画面左外に天山、画面に入って左の低いところが南ゲート越え(甲賀坂越え)、これははっきり分かる。ところが肝心の笹尾ヶ岳、それが判然としない。真ん中辺にちょっと高いところがある。これかなと思ったが、地図を見ると、それは手前に張り出してきている尾根で、ピークではなさそう。どうもその辺りのどれかとしか言いようがない。その後もだらだらとして上り下りで、最後に荒川谷(希望が丘から流れ出る大山川の流路)で一段と低くなる。
 麓に見えている住宅地と丘陵群の間を名神が走り、並行して大山川が流れている。したがって、いま見えている範囲に落ちた雨はすべて大山川に流れ落ちる。後述するように大きな屋根(笹尾ヶ岳丘陵群)と樋(大山川)の関係に例えられる。



地図03.笹尾ヶ岳丘陵群立体地図  カシミール3Dによる作図
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 左は、笹尾ヶ岳丘陵群を中心として、その周辺の河川の関係を示したものである。赤い線が家棟川と大山川の分水嶺(界)、「天山越え」から「南ゲート越え」に下り、そこから尾根を上がりなおして、途中から「中央道越え」に下るその様子を示している。なお、すんでしまった話であるが、天山のピークが分水嶺から離れ大山川流域にすっぽり入っていることがよく分かる。
 さて、この立体図は上の写真31の撮影地点上空から笹尾ヶ岳丘陵群を見たものである。写真31では見えている山体のすべてが大山川流域であるが、向こう側、すなわち希望が丘側へ回ると、話は俄然ややこしくなる。その様子を見ようとするものである。
 後述するように笹尾ヶ岳丘陵群は極めて単純な地形をしている。一言でいえば、南ゲートから東端の「希望の橋」のたもとまで、一本の尾根道がつながっている、ただそれだけである。だから、南ゲート駐車場から尾根道に取り付くと、左は家棟川へ、右は大山川へと別れる構図が手にとるように分かる。もし家棟川源流が希望の橋あたりまで伸びていたら、これほど単純な構図はなかった。左か右かただそれだけだった。ところが現実はそうでない。大山川が大きく家棟川の方へ回り込んでいる。これが話をややこしくした。右か左かの構図が崩れ、丘陵群の東半分では右も左も大山川という状況を作り出したのである。



地図04.南ゲート越え・中央道越え間の分水嶺  国土地理院Web地図
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 川が流域を造っているわけではない。流域は地形の産物である。でもこの陣取り合戦は面白い。中央道沿いの最高点(中央道越え)が、希望が丘の「かえでの森」のところにあったという現実、これが「右も左も大山川」という構図を作り出したわけである。重ねて言うが、この地図の中央道越えが、右端の希望の橋あたりへ移動していたら、笹尾ヶ岳丘陵群の北半分は家棟川流域に入っていたわけである。
 なお、この地図の左下に見える印が写真31の撮影場所。地図03はこの上空からの俯瞰地図である。この盆地のほとんどが住宅で埋め尽くされているのに、ここだけ田圃が残り、風景の広がりが見えるという貴重な場所である。










2.南ゲート駐車場
写真32.南陵コース上り口
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 南ゲート駐車場。かつての甲賀坂を広げて作ったもので、広い駐車場だが、普段の日には車が何台も止まっていることはまずない。その駐車場の片隅に木の階段があって、「希望が丘南陵見晴らしコース登山口」とある。「南陵」というのは、希望が丘用語であって、希望が丘の北の山稜、南の山稜という意味である。私が言う笹尾ヶ岳丘陵群の南陵というわけではない。
 写真に見える階段に正対して(笹尾ヶ岳に向かって)立つとき、左(希望が丘側)が家棟川流域、右側(甲賀坂・サイドタウン側)が大山川流域である。素人目だが、写真に写っている階段の高さ分だけ駐車場のために堀り下げたのではないかと思う。



写真33.尾根道を行く
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 写真32の、木の段を登り終えると、すぐに尾根道になる。人1人分の道幅が続く。ここへ落ちた雨は、間違いなく左右どちらかへ振り分けられるはずだ。左は希望が丘の家棟川、右はサイドタウンを経て大山川へ。分かりやすい地形である。

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  写真34.尾根道を行く
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 尾根道に登りきってしまうと、このような細い道が続く。右へ伸びるような尾根が枝分かれすることもあるが、下を覗けばちょっと下がったところでとぎれている。尾根道をもう1枚





写真35.雨山頂上
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 雨山頂上、242m、シダに覆われていた。希望が丘の案内書には「天山方面がよく見える」とのただし書きがあったが、残念ながら木が邪魔になる。複雑な天山の尾根筋が見えはしないかと期待したが無理だった。気楽な道を歩いていては展望は得られないということか。


  写真36.岩が現れる
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 岩が現れるようになる。当然道よりは高くなるが、全体的に見て尾根歩きであることは変わらない。







写真37.尾根道が続く
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 どこまで行っても尾根歩きである。これでもう少し木が少なくて、展望がきいたら、本当に気持ちのいいコースである。残念だが木が多い。ここは日本の山である。








3.笹尾ヶ岳山頂
写真38.笹尾ヶ岳山頂
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 もうぼちぼちかなと思っていたら、突然笹尾ヶ岳の頂上に出る。どうしても頂上としての実感が湧かない。下から見たときピークがはっきりしなかったのもうなずける。これで何で「岳」なのかと改めて思う。希望が丘の立て札には「ピーク」とある。ふーん、これでねー。
 山頂を訪ねるのが目的ではないんだ、分水嶺を確かめるのが目的だと気を取り直して・・・。





写真39.なおも尾根を行く
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 なおも尾根を行く。多少広くなったり狭くなったり、シダが現れたり消えたりするが、基本的には尾根歩き。


  写真40.野外活動センター
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 山の中にしては不似合いな建物が現れる。野外活動センターらしい。もうちょっとそれらしいデザインが考えられなかったのか。






4.枝道分岐
写真41.枝道分岐
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 少し行くと「枝道分岐」へ出る。道は左(希望が丘の方)へ降っていく。「キャンプ場・かえでの森へ」とある。下りてみようかと思ったが、きょうはとにかくこの丘陵群を荒川谷にぶつかるまで歩いてみようと予定をしてきたので、そのまま進むこととする。


  写真42.ずーっと尾根歩き
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 地図で読んだ通りの尾根歩きだった。木の影の向きで道の向きが分かる。








写真43.尾根歩き
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 幅1mあるかなしかの尾根道。地図で見ると右も左も大山川流域の部分に入っているのだが、道を歩いている限りにおいてそれは分からない。相変わらず左家棟川、右大山川の感覚である。


 写真44.尾根から離れる?
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 地形的に尾根から離れるかなと思わす部分だった。しかしこの後もまた、少しの間、枝尾根を下る。
 と、ぎょっとするようなポールに出くわす。一瞬、アンテナか何かかと思ったが、高さ数m。意味不明。




写真45.中央道
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 ポールから50m足らずで木の間に中央道が見え出す。


  写真46.中央道出会い
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 中央道出会い、間違いなく前回中央道歩きで確かめていた場所だった。希望の橋がすぐそこに見えた。








5.歩きながら考えた

 笹尾ヶ岳丘陵群を南ゲート駐車場から希望の橋までを歩いてみた。地図で読んだとおり尾根歩きに終始した。かえでの森への分水嶺はどこかと、そればかりを確かめながら歩いた。その尾根は、あったといえばあったと言えるし、なかったといえばなかったと言える。笹尾ヶ岳から枝道分岐までのほぼ真ん中辺りで、尾根筋が分厚くなって、腫れた感じになっていたところ。それが尾根だったといえば言える。写真は撮っていない。木が生い茂って、撮っても意味が分からない写真でしかなかったはず。多分そこを強引に下って、自転車道のトイレの裏あたりへ下りたら万々歳だが、この年齢でそこを歩く勇気はなかった。
 

地図05.笹尾ヶ岳模式図
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 ここまで考えた時点ではまだその尾根道にこだわっていたが、よくよく考えてみると、例えそれがなかったとしても何ら支障がないことが分かってきた。
 左は笹尾ヶ岳の模式図である。ライトブルーの長方形が笹尾ヶ岳。A,B,C,Dと4つの面を持つ屋根だと考える。普通はそれぞれの面に1本の樋を持つはずだが、それが変則的に図のような配置にしたと考えればよい。要するに、面Aだけ家棟川と大山川の2つの樋で分担することになっている。面Aに落ちた雨だけが、落ちた結果、家棟川と大山川に別れるのである。その境が「中央道越え」。初めから境を区切って仕分ける必要はない。落ちたとこ勝負で別れていくだけだ。

 この考え方で間違いはないはずだが、やっぱりあの枝道が気になる。あれが分水嶺だとは思わないが、実際にはどんな道なのか。ひょっとしたら分水嶺の尾根とよく似た顔をしているかも知れない。もう一度そこへ行ってみることにした。


6.枝道を歩く
写真41. 枝道分岐
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 日を改めて枝道を下ることにした。上の写真41のポイントである。ここまでは南ゲートから尾根づたいの同じ道。ここからが下りである。








写真47.尾根道
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 下りにかかってすぐその道が尾根道であることが分かる。しかし地図で見て、その道はかえでの森よりは希望の橋寄り(上の地図05.笹尾ヶ岳模式図で、面Aでも右の方、すなわち大山川流域)に下りつくはずである。しかしどちらに流れつこうが、下の川が大山川か家棟川かというだけで、上の模式図の面Aは、初めからどちらに流してやろうなどとは考えないはず。下の樋が2つに分かれているだけで、水は流れ落ちたところで、はい、そうですかと分かれていくだけだ。



写真48.尾根道
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 尾根道を上から下へ向いていて撮っており、およそ下り勾配のようには写っていないが、道は尾根道の上を降っていく。

  写真49.ブッシュ
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 下るに従いこのようなブッシュを抜けるが、それもわずか。








写真50.中央道が見える 
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 すぐに中央道が見え出す。なんやこんなに近かったのか。これだったら前回来たときに往復しておけば話が早かったのに。もったいなかったと言っても後の祭り。

  写真51.中央道出会い
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 中央道に出会う。尾根道から7,8分。アホみたいな下りだった。道は始めから終わりまで尾根道。例によってイノシシが掘り返してはいるが、ちょっと辛抱すれば終わりだった。





写真52.中央道から振り返る
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 中央道から枝道を見たところ。標識には、「南陵見晴らしコースかえでの森登山口」とある。あまり見晴らしがいいとは思わなかったが。

  写真53.灯籠の近く
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 下りた場所が、日本庭園の近く、例の石灯籠の近くだった。言うまでもなく大山川流域である。
  意味のない尾根探し。ちょっとした遊びだった。






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