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SZ01.田村川流域

SZ01E. 田村川を遡る・E

取材:2020.12
初稿UP:2022.02.27


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地図006.田村川流域地図 6  (国土地理院Web地図に加筆)
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  地図左下に見えるPゾーンが田村川流域集落の最高地点である。標高は約350m、源流部に立つ2本のアンテナ(小さくて見にくいが地図の右上、”野洲川流域”の文字の右にアンテナマークがある。)位置の標高が約922m。P点からそのアンテナまでの水平距離が約6.0Kmである。最後の集落から源流までの谷筋が、このようにほぼ直線を示す川も珍しいのではないか。
  詳しい値は知らないが、川の流れは速ければいいというのものではないという。そのためには、河床の勾配に限度があり、適当なところで落差工を配置して全体の流れの速さを調節するするのだという。
  田村川黒滝GoogleMap。左をクリックすると田村川黒滝集落周辺の地図が表示される。バルーンの位置はすでに見てきた宮前橋である。地図面左下の黒い四角形をクリックすると航空写真に切り替わる。川筋を注意しながら見てもらうと、川を横切る白い線が目につく。落差工の水しぶきである。宮前橋のすぐ下流の2本を勘定に入れて、カウントしながら上流へ遡って行くと、集落を離れるまでで9本。源流部で川が細分化する地点まででは27本に及ぶ。ほとんど直線で、竹を割ったような谷筋だけど、流れの環境は厳しい。念のために少し北の野洲川について、野洲川ダムから武平峠までをトレースしてほしい。ほとんど白い線は見つからないはずである。
  ここまで来れば、あとは源流部ということになるわけだが、それはあとまわしにして、いったん合流部の白川橋へ戻って野洲川・田村川分水嶺をたどって源流部に遡ることにしよう。  



野洲川・田村川分水嶺
地図011.野洲川・田村川分水嶺 ・ 1
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  上の地図は青土ダム南部の山地、いい換えたら、野洲川・田村川両川の分水嶺が、合流部から上流へ向かい県道507号を越えるまでのところをトレースしたものである。(地図をクリックした場合、お使いのディスプレーによっては、左右がオーバーするかもしれません。県道507号は右の方に隠れていることがあります。左右にスクロールしてご覧ください)。


来見橋・来見川
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  地図に見るように、南土山宿場町の中ほどに来見橋(くるみ橋)という橋がある。欄干は瓦をのせた塀を模して作られ、広重の東海道五十三次の絵がはめ込まれている。『S1301. 田村川を遡る』で述べたように、この川も橋と同じ来見川。野洲川・田村川分水嶺の近くから南に向かって流れだし、国道1号・土山宿を横断して田村川に注ぐ。



県道507号

  県道507号は、国道1号・「猪鼻」交差点を起点として、田村川に沿って上流へと進む。上の地図に現れるのは上の平橋の少し 写真拡大下流である。
  上の平橋の手前、田村川左岸の集落・上の平の里道沿いに、前項に述べたように小さな石標が立っている。前項では、いちばん上に大きく「左」と簡単にけりをつけたが、いま改めてみると、これを簡単に”左”とやっつけていいのか。わかるのは一画目と二画目だけである。あとははっきりしない。しかしこのはっきりしない石標で柱になるのはその下の、「あい川」である。そう、いまの「鮎河」であろう。県道507号沿い、野洲川と”うぐい川”の合流点の少し北、野洲川の谷筋、野洲川ダムと青土ダム間の唯一の集落である。2行目は”川ら”としか読めないが、地名から考えて、「大河原」であろう。この石標は、県道507号を左へ取るためのものであった。



(名称不明)
地図012.県道507号
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  さて、上の平橋を渡る。そこで右折すると前項の黒滝へ向かう。ここではそのまま直進する。ここでの標高が325m。そこからすぐ登りに入った道は700余mで峠に達する。野洲川・田村川流域の分水嶺を越えるのである。峠の標高は378m。三差路からの標高差53m。バスで越そうと、自家用車で越えようと、何の意識もせずに越えてしまう。








写真TR1,T川・田村川合流点
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  峠の手前を水源として 川(田村川の支流)が流れ出し、県道沿いに流れ下ってくる。左の写真は、その 川が田村川に合流するところである。撮影場所は上ノ平橋の三叉路から黒滝へ向かう道を曲がったところ。奥の光っている川が田村川。左が上流。右の杉林の向こう側が上ノ平橋。






写真TR2,T川・田村川合流点(上ノ平橋から)
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 上ノ平橋左岸上流側から合流点を見たところ。手前が田村川(右が上流・黒滝側)。画面上方に見えるガードレールが黒滝への道(右が黒滝)。ガードレールの切れ目あたりが、上の写真の撮影地点である。 川は、黒滝道路の下を暗渠で抜けて、左の杉林のふちを経て田村川に向かってくる。





写真TR3,暗渠の向こう側
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  もう一度、黒滝道路の撮影地点に戻って、 川暗渠の向こう側を見る。県道沿い(峠に向かって右側)を流れ下ってくるわけだから、その川筋が見えるはず。しかしすぐ目の前に杉の木が立ち並び、川が流れる雰囲気すら見えない。峠まで車で走ってみたが、このあと峠まで、 川の流れは一切見えなかった。

一方、 川(野洲川の支流)は県道のルートより上流を水源としている。そんなことで峠の少し下流を暗渠でくぐっている。この暗渠から峠を挟んで 川までの距離は、地図の上でほぼ130m。この狭い間隔の上を野洲川・田村川分水嶺が抜けている。



うぐい川
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  県道は峠を越えた。野洲川流域を走ることになる。それが証拠に 川が右左しながら北上する。そして野洲川に合流する。 川はこれでけりがついたが、県道はどうか。 川と別れた後もさらに北上し、うぐい川をまたぐ。(『うぐい』という字は、魚ヘンに”成”と書くそうだ)。野洲川流域を走っているつもりでいたのに、いつの間にかうぐい川流域に入っている。これはどうしたことか。
  うぐい川橋を渡る。すぐ下流で野洲川に合流しでいる。言うまでもなく野洲川の支流である。左の写真はうぐい川橋から上流側を見たところである。近来、この両岸が桜並木として有名になった。案内板があって、平成24(2012)年現在の文章で、いまから60余年前に三上六所神社の改築を記念して植樹されたのが初まりだとし、昭和55(1980)年からは小学校の卒業記念として植えられ現在に至っていると。うぐい川橋から谷の奥を見る



うぐい川流域
地図013.うぐい川流域
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  野洲川流域と田村川流域に挟まれた”うぐい川流域”図である。図中、四角な枠は、茶色の大きな方は、2つ上の地図012.県道507号を中心としてエリアである。一方右上の黒い小さな枠は、下の地図014、野洲川と田村川の源流部(両川の最後の分水嶺)である。上の地図011で見るように、野洲川・田村川の合流点から始まった野洲川・田村川分水嶺は、県道507号を越えてからもそのまま野洲川がうぐい川に置き変わった形で田村川・うぐい川分水嶺として上流へ向かう。大げさな見方をすれば、黒滝集落の最上部から見上げた田村川上流の写真、ここで見上げる左側の稜線が、この地図でいう田村川・うぐい川分水嶺の一部だったのである。




地図014.野洲川・田村川源流域
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  うぐい川の源流域最奥部は三重県との境にいま一歩のところで届かない。両者間の最短距離は1.4Km強である。地図で見るだけで、実際に現場に立ったわけではないので何とも言えないが、平坦な普通の道路なら、徒歩で10分余の距離でしかない。しかし、田村川を見る限り、本流は谷筋の西側(うぐい川側)を流れている。ということはうぐい川側が低いということだろう。
  実際にどれぐらいの高低差なのか。地図の上で調べてみた。県境側が881m。うぐい川側873m。その差8m。水平距離1.43Kmに対して高低差がたったの8mである。これが体感的にどれぐらいの勾配か。たとえば、京都の烏丸通り(京都御所に面している通りである)について、今出川通から丸太町までを測ってみる。約1,3Km.もう1本南の通りまで行くと1.4Kmになる。この間の標高差が約10m。烏丸通りの勾配の方がきついのである(京都御所の横の烏丸通りを歩いていて勾配は感じない)。それでいて、分水嶺付近の水は8mの標高差に引かれてうぐい川側へ流れ、稜線にぶつかった後、改めてそれぞれの谷筋へ流れ下っていく。重力の厳しさである。




地図015A.野洲川・うぐい川分水嶺
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  上で示した地図012とほぼ同じエリアである。地図011の横長の地図で、野洲川・田村川の合流点を出発点として、両川の間をたどりながら、県道507号の峠までやってきた。それを過ぎて、田村川との分水嶺の相手がいつの間にか変わっている。田村川という 1 本の川、それに対して分水嶺の相手は野洲川からうぐい川に変わっている。その変わり目がはどこかということである。
  左の地図で分水嶺が県道507号を越えるまでは、野洲川が相手であることは間違いはない。それが証拠に、峠のすぐ北側を ”Y 川”(野洲川の支流)が流れていることで明らかである。かてて加えて507号が野洲川とうぐい川の合流点のすぐ近くを通るがために、いかにもそれが分水嶺であるかのように見えなくもない。
  そういうことを考えながら地図を眺めていると、野洲川と”うぐい川”の合流点を頂点とする三角形が浮かんでくる。この三角形の中に、野洲川・うぐい川間の分水嶺が隠れているはずだ。




地図015B.野洲川・うぐい川分水嶺・南側 1
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  左の地図の赤い実線は田村川の分水嶺である。相手は下流のほう(左の方)が野洲川、上流へ進んで”うぐい川”に替わる。その替わる地点が赤い実線の上のどこかを探してみよう。
  水は上から下へ向かって流れるからつい分水嶺も上から下へ向かって探したくなるが、これをやると世話がやける。可能性のあるやつを上から順にシラミつぶしでやらなければならない。最終的には野洲川とうぐい川との間の1本の線を探すわけだから、必然性の高いポイントを探す。要するに”うぐい川と野洲川”の合流点へ行きつく線を探せばいいのである。
  左の地図で野洲川に対してうぐい川が直角方向に合流する。2つの川に挟まれたエリア(上の地図で三角形で示した範囲。うぐい川の北にもあるが、いまの場合は南側をとり上げる)で、うぐい川に流れ込む川と、野洲川に流れ込む川とに分ける。大きく”U”と表したのが”うぐい川グループ(U1,U2)、”Y”が野洲川グループ (Y1,Y2)である。その2つの隙間(U 2-Y1)が分水嶺の通るルートになる。その隙間を通って尾根筋が平地に至る点を探す。いまの場合、その尾根の終端はA点とB点との2か所が考えられる。A,Bに至る尾根筋はすぐ上手で分かれて来たものだから、どちらを選ぼうと大差はない。いまの場合はうぐい川の分水嶺が三重県境近くまで行って反対側を戻ってくる。それが対岸へ下って来ることを考えてA点を選んだ。
  U1,U2,Y1,Y2などそれぞれの川の最上部である。A点との関係を考えると、分水嶺はU2とY1の間を通過しなければならない。このルールに従って引いた線が赤色の破線である。いまは、A点から出た線が、U2とY1の間を通過しようとしているところである。念のために、地図で川は青色の細い線。黒い線は実線も破線も山道である。




地図015C.野洲川・うぐい川分水嶺・南側 2
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    この作業が終われば、あとは簡単である。赤色の実線上のしかるべきところから下ってくる尾根筋を探して、上で引いた破線につなげばいいだけである。Ps点が分水嶺の三叉路ということになる。Ps−A間の破線が”野洲川・うぐい川分水嶺”、田村川分水嶺は、Ps点を境に対象が変わる。下流側は野洲川、上流側がうぐい川である。













地図016.野洲川・うぐい川分水嶺・北側
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  田村川・うぐい川の分水嶺は三重県との県境近くまで遡って、今度は相手を野洲川との分水嶺として下ってくる。左の地図の北東隅(右上隅)から現れる実線がそれである。尾根筋をたどることはさしてむつかしくはない。しかし、うっかりそのまま進んでしまうとYグループの支流にぶつかってしまう。それをやるとアウト。そこであれこれ迷っているよりは、逆から入ったほうが分かりやすい。山麓のC点から逆に尾根(赤色の破線)をたどる。これが実線と交わるところが、Pn点である。
  P点の意味は、平地から上ってきた線が、上の尾根筋と出合うポイントという意味である。n、s は北と南の区別。






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