天気が心配されたが、当日(2012.05.21)は思いもかけない天気だった。肝心の最大食前後で局地的な雲に悩まされたが、こればかりは時の運。とにかく一生に一度の金環食に出会うことが出来た。以下その撮影記録のまとめである。
1.事前にチェックしたこと
500円の日蝕観察プレートを使って、事前のテスト撮影とKikuchiMagickを使って合成テスト。天気の合間を見て、4,5回繰り返した。ピントも露出もマニュアル・モード。
2.作品のイメージ最終確認
事前テストで得たデータから、前々日に上のように最終イメージを確定した。
上の写真で、斜めの直線は本番での太陽のルート。数珠繋ぎに写っているのは、2分おきのテスト撮影での画像(54mmレンズを使用)。全部で11個あるから、両端間の距離が時間にして20分になる。レンズが長くなると太陽も大きくなり、当然この距離も長くなる。(太陽の直線と傾きが違っているが、テストのときにカメラの水平セッティング狂っていたもの)。
最大食の位置を直線上の大きな丸の位置とする。そのときの時刻が7時30分51秒である。
方眼目盛りは私が使っているカメラ(オリンパスE30)のディスプレーの補助線。最初のシャッターの太陽の位置を一番下の線とする。偶然の一致だったが、最大食から逆算して30分前に当たっていた。したがって午前7時00分51秒に、ディスプレー上の一番下の線上、しかるべきところに太陽を置いて最初のシャッターを切ればいい。以上が最終確認。
3.本番撮影
さて本番。人生70数年にして初体験だから、何が起こるか分からない。6時30分ぐらいに現場へ。日蝕はすでに始まっていたが、それをちらちらと覗きながらカメラをセット。マニュアルでのピント合わせ、露出の調整。余った時間、別のカメラで望遠撮影をしたりして遊ぶ。予定の時刻7時00分51秒、1回目のシャッター。あとは無念無想で1分ごとにシャッターを切るのみ。7時53分、太陽は画面から去っていった。途中、2,3度局地的な雲が現れてやきもき、とくに最大食・金環時に邪魔をされたが、とにもかくにも日蝕全体を撮影することが出来た。幸いだった。
4.コンピュータ処理
まず、とにかく撮ってきた53枚をそのまま合成してみた(写真21A)。7時00分51秒を第1回として1分ごとに撮影したものである。最大食の前後、4度ほど薄雲に覆われたことが分かる。太陽そのものはいままで何度も撮ってきたが、時間を規定して撮影したのは初めてだった。最大食あたりを見ると分かるが、1分間でおよそ半径分(2分間で太陽自体の直径分)動いていることが分かる。
写真21A
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写真21B
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そのまま風景に重ねてみると、写真21Bのように山と重なる部分がある。だから最初の5枚ほどは使えない。合成対象から外す。そのあと最大食を中心として、前後2枚おき引き抜いて合成すれば3分ごとの画像になるし、3枚おきに引き抜けば4分おきの画像(写真22A)になる。
写真22A
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写真22B
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以下、遊びである。
谷文晁の三上山を引っ張り出してきた。余談だが、30数年前、この絵を初めて見たときには拒否反応を示したが、その後何度もつきあいしているうちに親しみを感じるようになった。不思議なものである。
さて、その文晁、あとで述べるがいまの場合オリジナルのままだと使いにくい。ということでネガにした。と、それがまた何とも味が出る。文晁さんは知らないはずだが。そのネガ文晁に上で作った太陽を合成すると、当然のことながらこれはアカン(写真23B)。
写真23A
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写真23B
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で、太陽を右へ動かす。いろんな手があるだろうが、たとえば上の日蝕列を下(写真24A)の白線のようにトリミングする。この場合、一番下は要らないからカットしておく。そのトリミングしたものを別名で保存しておく。画像処理ソフトを使って、同じ大きさで黒く塗りつぶした画像を作りレイヤーを使って先ほどトリミングしたものを望む位置にめ込む。合成したものが写真24Bである。
写真24A
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写真24B
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以上の手法を使えば、下のような話にもなる。実は今回の撮影は上で述べた作品イメージのように、南桜からの三上山をベースに組み立てていた。この場合、さくら緑地から見た場合、三上山は西に当たる。やることはどうせ合成であることは目に見えているわけだし、西から昇ったお日さまが・・・という歌もあるわけだからとエエかげんに考えていた。しかしいざ絵にするとなるとやっぱりなーということで、急遽三上からの絵を持ってきた。しかし出来た写真は上の22Bで、何となくバランスが悪い。下の写真25は22Bの改良版というところである。
写真25
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以上合成には、KikuchiMgick
の「比較明コンポジット」を使った。要するに、黒い画面に明るい画像を合成しようとするものである。
5.合成・比較暗コンポジット
谷文晁・三上山のオリジナルは空が白い。そこへ明るい太陽は合成できない。やろうとすれば黒い太陽(上で作った太陽列をネガにする)を作って「比較暗コンポジット」で合成することになる(写真26AB)。
写真26A
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写真26B
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