野洲川物語


祇王井川探索Map

おもしろいぞ、祇王井川は

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 さぁーて、きょうはどっち向きに流れているか。雲の話ではない。川の水の話である。「川の水は上流から下流に・・・決まっているでしょうが」、そう、それが常識。しかし世の中、常識どおりに行かないこともあるんです。だから祇王井川は面白い。



写真1A・地図
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写真1B・地図
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 上は左手前から流れてきた祇王井川が、橋をくぐって画面中央奥、中ノ池川へと流れ下っていくところである。2枚は一見同じように見える。しかし、よくみると違いがいろいろと見えてくる。一言でいうと水位の差である。左の写真1Aでは川全面が水面だが、右の1Bでは、橋の下に堆積土が露出している。さらに、1Bでは橋の右から小川の水が流れ込んでいるが、写真1Aではそれが見られない。

 さて問題はこの小川、じつはこれが祇王井川なのである。
 水は水位の高い方から低い方に流れる。祇王井川でいえば石部の頭首工を水源として家棟川河口まで、その間、自然の摂理にしたがって、理路整然と高きから低きに流れていくものだと思いこんでいた。それがそうではなかったのである。

地図01
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 左が問題の場所の地図である。端的に言えば野洲電車基地の琵琶湖側。生和神社を囲む三角形の水路である。
 「南西(左下)からやって来た祇王井川が斜め左へ中ノ池川を分岐する」。川の名前だけでいえばこのような文章になるが、水量その他実情では、「南西からやって来た祇王井川が、中ノ池川と名を変え屈曲する。その地点で祇王井川を右へ分岐する」。といった方がイメージに合う。地図を拡大(クリック)して見ると分かりやすい。


写真2A・地図
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写真2B・地図
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 雨が降れば川の水量が増し、晴天が続けば川は枯れる。当たり前のことである。写真1A・Bのような水位の変化は、普通の河川でも十分に起こりうることである。ところがここの場合はそうではない。写真1で見た橋の下流側に水の出し入れで体積が変化する堰(正式名称がわからなので、私は勝手に空気堰と呼んでいたが、実際には水の出し入れだという。何と呼べばいいのか。)があって、それで水位を調節しているのである。
 左の写真2Aで灰色の鯨のようなのが堰。2Bは水が抜かれた状態。



写真3A・地図
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写真3B・地図
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 左・堰による水位の差。写真2Aを下流側から見たところ。堰を挟んで水位の差が見られる。しかし、水を抜くと右のように段差なしになる。

●空気堰?顛末記
 要するに上の写真で見る鯨のような堰のことである。私にとっては正式名称すら分からない。分かっているのはその堰がゴム(?だと思うのだが)で出来ており、その中へ何かを出し入れして、堰の高さを調節しているということだけである。
 問題はその「何か」が何であるかである。最初私は風景同好会の前会長Tさんから「空気」だと教えてもらった。なるほど空気かと思って、最初はこの文ではその何かを「空気」とした。
 その後、この文を読んだ同会のYさんから、あれは「水」であると教えられた。そういわれたらなるほどそうかも知れない。空気では軽いからな、と納得して「空気」を「水」と書き換えた。
 その後1ヶ月ほどたったとき、この堰の真ん前に住まいしているとおっしゃるXさんから電話を戴いた。(一回だけの電話だったのでお名前をしっかり聞き取れなかった)。Xさんがおっしゃるには、あれは最初は水でした。そのときは、堰が上がると川幅いっぱいの滝が出来て見事なものだった。けども、水の出し入れに時間がかかって能率が悪い。ということで、いまは空気になっている。堰が上がったとき、いまのように一部から水が流れ落ちるようになったのは空気に変わってからだという。
 そういわれるとまたそんな気もしてくる。水だとぬいた水のやり場が問題になるわけで、堰を上げて下流の水量を下げようというときに、堰内の水を流すのも矛盾しているし。空気ならすーとぬいて知らん顔しておればいいわけで。
 結局、各論を併記して顛末記店じまいとさせていただく。



 さて、こうして人為的に作られた水位の変化によって、分岐したあとの祇王井川の流れはどうなるか。


写真4A・地図
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写真4B・地図
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 写真4A,中ノ池川から分岐して50mほどのところ。4A画面左を縦に流れるのが祇王井川(手前が上流・中の池川分岐点)。ここで右から(JR線の方から)1本の水路が流入して来る(写真4Bで板の橋がかかっている水路)。


写真5A
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 中ノ池川の水位が高い場合(写真1A)(堰が作動している場合・写真3A)、水は写真4Aの赤い矢印の向きに流れる。上流から下流へと常識的な流れ(左・写真5A)であって、とやかくいうことではない。画面右下からピンク色の花びらが流れていく。



写真5B
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 しかし、その水位が低くなると(写真1B)(水が抜かれ堰が開放された場合・写真3B)、青い矢印のように地図のA→C間50mを逆流し、写真5Bのように、中ノ池川へ流れ落ちる。



写真6A・地図
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写真6B・地図
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 地図のA点からB点まではどうか。A→C点で逆流が起こっているとき、A→B点では水はほとんど動かない。写真6Aが分岐点の水位が高いとき。6Bが水位の低いときである。6Bでいちばん手前に見える建物は6Aでも見える。水面までの石垣の段数で水位の変化を読みとることができる。6Bの方が石垣1段分低くなっているのが分かる。


写真7A・地図
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写真7B・地図
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 生和神社裏T字型分岐を生和神社の対岸から見たところである。水位が低いときは写真7Bのような白いテラスが現れる。水位が高いとき、いわゆる逆流なしで正常に流れているときは水面下に没する(写真7A)。



写真8A・地図
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写真8B・地図
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 同じくT字型分岐を生和神社側から見たところである。8Aが水位が高いとき。8Bが低いとき、中ノ池川にもどる本流の水路には水が流れていない。



写真9A・地図
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写真9B・地図
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 写真9A、左の広い水路が中ノ池川にもどる本流。右の細いのが2号水路。本流がストップしたときにも、この細い水路には水が流れていく。ぎおう教室のTさんの話によると、この水路は中ノ池川・童子川と並行して流れ下り、童子川右岸の田園地帯への水を供給しているという。
 写真9Bは写真8の構造を反対側から見たところ。



写真10A・地図
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写真10B・地図
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 中ノ池川への出口。写真8Aの状態の時は左の写真10A、写真8Bのようにストップした状態ではここもカラカラ(10B)。



写真11・地図
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 2号水路の水門。豊かな水が流れていく。手前の広い方は水なし。橋の左が中ノ池川である。



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