山は手品師・山が入れ替わる

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 写真1は、するどく尖ったカブト山、円く穏やかな相場振山(ハタフリ山)、横に長い妙光寺山。その向こうから三上山がのぞく。何度か出てきた構図である。
 問題は写真2である。三上山がない。妙光寺山の形が変わって大きくなっている。以上を確認しておいてクイズを一つ。写真2のA山は何山でしょう。
 「子供だましのような問題を出すな」とおっしゃる方もおられるだろう。本気で答えていただきたい。
答え、A山は相場振山である。

 カブト山と相場振山は2つのピークを持った双子山である。地図2は、そのピークの部分を拡大したところである。ご覧の通りカブト山はその稜線が南北に長く、相場振山は東西に長い。南西方向から見ればちょうど「八」の字形をしている。

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 写真1はそれを北から撮った。撮影場所は野洲市北。写真2は守山市立入町、この峰を西から撮っていることになる。北から撮ればカブト山が尖り、西から見れば相場振山が尖る。不思議なことに、その尖り方が、一卵性双生児のように同じなのである。そうして互いに入れ替わる。子どものころ、折り紙で帆掛け船の遊びがあった。目をつむっていると帆と舳先が入れ替わっていた。あれを思い出す話である。もちろん北東方向から見れば、写真3のようにこの両者は全く同じ形になる。

 上述したように、私は、この2つの山は、本来は1つの山体に2つの峰を持った双耳峰だと考えている。それがどうしてそれぞれの峰に別々の名前がついたのか。
 カブト山は、近江輿地志略に「其形実に兜(カブト)を置けるがごとし。……土俗之が斎藤實盛が討死の日、兜を脱ぎて其処に置かしかば……」とある。写真3に見るように、両者を一つと見れば、カブトに見えなくもない。とすれば、初めは両者合わせてカブト山と呼ばれていたものが、その後、そのうちの一つが相場の旗振りに使われたため、そちらの峰が、相場振山と呼ばれるようになったのではないか。これが私の推論である。



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