撮影場所の位置確認、方位・距離測定には、ハンディGPSとパソコンソフト「カシミール3D」を使用した。この両者がなかったら、今回の編集は不可能であった。
2000年に前作『近江富士遊々』を出版したあと、もし次にもう一冊写真集を出すとしたら、編集の基本は「ぐるり一周、方位順に作品を並べて」との思いが頭の片隅にはあった。しかしその時点ではもっと漠然としたもので、現場へ方位磁石を持ち出してという程度の原始的なものだった。
しかし伊能忠敬の時代ではあるまいし、現実問題として方位磁石を振り回してそんなことが可能なのか。あれこれ悩んでいるときに出会ったのが、「ハンディGPS」と「カシミール3D」だった。特に後者は、杉本智彦氏が開発されたソフトでGPSと連動させて使うことによって、見事に効果を発揮してくれた。
私が使ったGPSは、GARMIN etrex SUMMITという機種(写真左)で、表示画面には現地の方向を示す大きな矢印と、現地までの距離が表示されるだけの簡単なものである。GPS本体には地図は一切表示されない。地図はカシミール3Dと連動させたパソコン上で扱う。それでどうして現地へ行けるのかと不思議に思われるかもしれないが、それが行けるのである。
早い話が、直線道路で矢印が車の進行方向と一致しておれば、その前方に目指すポイントがあるわけだし、ちょっと左に振っておれば、適当なところで左折すればよい。(京都のような碁盤の目の場合は、矢印が真左に向いたときに左折すればいい)。道は自分の判断で選ぶ。目指す道路上に出れば、矢印と車の進行方向とが一致する。あとは距離がだんだん減っていくのを読む。あるところまで行くと矢印はくるりと反転する。目指すポイントは後ろだよというわけである。要するに、反転するかしないかの点が目指すポイントというわけである。
こういった経過を経て、本書では、撮影位置を一般的な地名とともに、三上山からの方位・距離で表示した。
撮影場所の地名だけをメモしておく方法では、やがては何の役にも立たなくなることを、この30年何度も経験した。出版されたとき、すでに「古い」のが地図である。たかだか20数年でこれだから、50年、100年を考えれば、結局は緯度・経度で表すしかほかに方法はないと思われる。とはいうものの、この数値は学校の理科で習うだけの、およそ非日常的なしろものである。
さいわい本書の場合は、三上山という絶対不動の原点がある。その原点を中心として、真北からの角が何度、三上山からの距離が何Kmと表せば緯度経度と同じ意味を持つ。たかが写真の撮影位置に緯度・経度は大げさなと笑われそうだが、長い目で見たときにはこのデータが役に立つときが必ずくると確信している。
なお、本書では撮影場所の地図は割愛したが、いずれ、縮尺が自由に選べる詳細地図(GoogleMap)を、私(八田正文)のホームページで発表する予定である。
カシミール3D HP http://www.kashimir3d.com/
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