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写真集『近江富士百景』

6・7・8 月 

Web版初稿UP:2012.02.28
 

 

061.樹間落日

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 撮影日:1978.06.07
場所:甲西町(現湖南市)正福寺

撮影:2002.09.20・1

 甲西町、十二峰林道からの撮影。夏至に近く、太陽はちょうど三上山に沈む。
 360mmに2倍のテレコンバータをつけての撮影。右側に、比叡山から比良山に続く稜線が見える。

CD版コメント
 稜線を走る林道の、ちょうど中間地点あたりから見えた数本の松の木。 全体としてまとまった姿が何とも美しく、三上山とのバランスも申し分なし、初めて見たときには心が躍った。
 名神側からの道がまだ十二坊までつながっておらず、 舗装もされていない道は、車の往来もほとんどなかった。道に三脚を広げていても滅多なことはなく、安心して撮影できた。
 夏至の日の太陽が三上山に沈む。夏の夕方になると、自然と足は十二坊へ向いていた。しかし、こうして撮った松の木も、意外と寿命は短かかった。私のフィルムに残っているその姿は、1979年が最後である。 おそらくこのあと、数年を経ずして枯死したのではあるまいか。

 

062.遠い三上

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 撮影日:1980.06.08
場所:近江八幡市牧町

撮影:2002.07.09・1

 撮影場所は近江八幡市の野村町あたりだと思うが、撮影メモには具体的な場所が書いていない。以前このあたりは、このような水路が巡らされ、水郷の情景が随所に見られた。
 撮影場所を特定しようと、今回あらためてこの付近を探してみたが、大きく変わってしまって、全く見当がつかなかった。

CD版コメント
 書籍版では「野村町」となっているが、今回の確認により「牧町」と訂正。
 何回も行ったところではない、というのが唯一の記憶だったからやっかいなことである。ひょっとして、この木が残っているかもしれないと、淡い期待で探しに行ったが、とてもとても。最後の頼りは山の重なりだけだった。 野村町あたりだとの漠然とした記憶は見事にはずれ、それよりかなり北の方角にあたる牧町の水路沿いだった。画面右端に見える工場風の建物3棟が決め手になった。

 

063.麦秋・近江富士

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 撮影日:1990.06.10
場所:中主町(現野洲市)安治

撮影:2002.08.30・1

 麦が色づいた。湖岸道路を走ると、中主町あたりで広大な麦畑が見られる。黄色い麦の色は、赤みがかった夕日を背にした順光線のときに、ひときわ輝いて見える。
 一般に、順光線のときは風景が乾いて生気を失うが、麦だけはその範疇に入らない。不思議である。

CD版コメント
 湖岸道路からの美しい風景も、ほとんどのところで田圃のなかに張り巡らされた電柱に泣かされる。しかし、ここだけはその電柱もほとんど目に付かず、広大な田園が眼前一帯に広がる。
 場所は、湖岸道路を草津のほうから近江八幡へ向かって走り、家棟川の橋にかかる手前の道を右折する。道は何遮るものもない田圃のなかの直線道路で、前方に三上山が見える。昔の写真で三上山の左下に大きな木が見えている。この付近の目印になっていたが、この木もいつの間にか伐りとられてしまった。

 

064.夏至の日に

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 撮影日:1979.06.22
場所:甲西町(現湖南市)十二坊山頂

撮影:2002.09.20・1

 甲西町岩根、十二坊山頂テレビ中継塔からの撮影。
 梅雨のさなかには珍しい快晴。地図の上で調べていた夏至の日の十二坊山頂からの三上山への落日。このあと太陽は右下向きに、三上山の頂上めがけて落ちていった。

CD版コメント
 十二峰林道の名神側の入り口が閉鎖されてかなりになる。20年前のあの眺望が失われていることは十分承知していたが、最終確認のつもりで、岩根側から林道へ入った。林道はかろうじて通ることはできた。 しかし生い茂る樹木で視界はゼロ。かつての撮影ポイントも、それをつかむ手がかりさえ得られなかった。
 十二峰林道からの風景は絶滅した。現在、十二坊山系から三上山が見えるのは、山頂を少し下った遊歩道にある展望台のみである。今思うと、20年前のこの林道との出会いは、私にとっての宝であった。

 

065.こがね色のとき

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 撮影日:1990.07.31
場所:(現甲賀市)水口町北内貴

撮影:2002年ごろ・1

 水口町スポーツの森の近く、新しく開通した国道307号沿いにある池からの撮影。梅雨も明けた夏の夕方、空気全体がこがね色に染まる。

CD版コメント
 水口市街地から野洲川を越えた国道307号が、小さな峠を越えて貴生川に至る。その峠の部分、貴生川に向かって左側に駐車場がある。そこへ車をおいて道を渡って反対側へ出ると池があって、向こうに三上山が見える。
 池にはボートも浮かび、縁には遊歩道もある。国道からは10mぐらい高低差があり、以前は国道から直接階段で下りられた記憶があったので、 今回それを探してみたがどこにも見つからなかった。
 池と山との関係から見て、昔の写真は、池畔の遊歩道から撮ったようである。池と山は変わっていないが、周囲の木のようすは随分変わっている。 当時風景の目玉であった松の木がすべて消え去っている。

 

066.暮れる野洲川・Ⅰ

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 撮影日:1990.08.02
場所:甲西町(現湖南市)夏見

撮影:2002.08.22・1

 野洲川・甲西中央橋からの撮影。1988年、この近くの川原からゾウの足跡化石が発見された。左岸の粘土質の地層がその地層であろうか。
 三上山の左側の山が菩提寺山。

CD版コメント
 甲西中央橋、この橋を歩いて渡るのには勇気が要る。名前は立派だし、大型トラックなどが頻繁に行き来するのだが、不思議なことに歩道がない。こちらもやむにやまれぬ事情があるのだからと自分に言い聞かせて、第一歩を踏み出す。大きなのが来ると、欄干に身を寄せて待避。
 ところが、人間不思議なもので、それを繰り返すと何でもなくなる。近づいてくるトラックを横目で見ながら、持っていった写真集と実際の風景とを見比べる余裕も出てくる。 昔の写真には比良山が写っていないので、山の重なりの手は使えず、場所特定のキーポイントは、2本の送電塔だった。昔うっそうとしていた河川敷は運動公園になっていた。

 

067.暮れる野洲川・Ⅱ

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 撮影日:1990.08.05
場所:甲西町(現湖南市)三雲

撮影:2002.08.22・1

 前ページとよく似た構図だが、こちらは甲西中央橋から約2Km上流の横田橋からの撮影。同じレンズを使っても、山の大きさは少し小さくなる。
 暮れゆく浅瀬に釣り人がひとり。

CD版コメント
 横田橋からの三上山。森の向こうに工場らしい建物が見えるのと、右岸に民家らしいものが見えるのを除けば、12年前と大きな変化はない。昔の写真では人工構造物を消すために、それらが闇に沈む時間帯を狙って撮っているから、 ひょっとしたらそれらはありながら写っていなかったのかもしれない。
 横田橋東詰の朝国交差点が立体化された。昔の写真を撮ったとき、その工事は始まっていたのだろうか。 そこまでの記憶はないが、この橋の上流には、旧東海道・横田の渡しの旧跡もある。今も昔の交通の要衝であったことは間違いない。

 

068.夏 の 池

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 撮影日:1981.08.03
場所:近江八幡市牧町

撮影:2002年ごろ・1

 近江八幡市牧町、湖岸道路沿いにある池。何かを養殖しているのだろうか、小さな水車が盛んに水をはねていた。
 少し長いレンズを使っているから、三上山は大きく見えるが、肉眼で見るともう少し小さな感じがする。

CD版コメント
 白鳥川の左岸を琵琶湖へ向かって走ると左側にこの池が見えてくる。 湖岸道路の信号の20mほど手前で左へ折れて農道へはいると池の畔へ出る。この写真を撮ったのはそこから湖岸道路に平行に50mほど進んだところである。
 池に、昔のような生き生きとした表情は見られないが、風景としてはほとんど変わっていない。現在でも十分絵になることころである。
 新旧2枚を並べてみるとよく分かるが、三上山のすぐ左の尖った山(山火事で焼けた田中山)の高さと形が微妙に違う。樹木がなくなったのが理由だろうか。

 

069.透明な朝

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 撮影日:1981.08.05
場所:栗東町(現栗東市)出庭

撮影:2002.11.29・1

 栗東町出庭、野洲川運動公園から見た三上山。
 立秋も近い8月の朝、透明な空気に空の色がすっかり秋。三上山の頂上付近から昇る太陽がきらりと光る。

CD版コメント
 この松は運動公園沿いの堤防の斜面、 それもあまり低くないところに生えていた。道路を挟むかたちでカメラをセットし、ワイドでよく狙った。対岸にはいろいろと夾雑物があるから、日の出の逆光時を狙うしか絵にならない。毎年、8月上旬に1~2日、夏とは思えない透明な日がある。その清冽な空気の中で対岸の諸物は すべて闇におちた。
 場所は国道8号野洲川大橋より300mほど下流(琵琶湖寄り)。右側(川側)に「運動公園入り口」という看板が立っていて、 反対側(堤防の外側)へ下りるとお墓の横に駐車場がある。

 

070.夏の朝日

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 撮影日:1990.08.09
場所:大津市におの浜

撮影:2002.10.10・1

 冬とは全く違う夏の琵琶湖。けだるく重い空気の中から、太陽が何の前触れもなくぬーっと昇る。注意せずにいたらいつ昇ったのかわからないぐらい。
 対岸の橋は、草津市矢橋帰帆島に架かる湖岸道路の橋。

CD版コメント
 撮影場所は、なぎさ公園駐車場横の湖岸である。 昔の写真を撮ったときは、なぎさ公園が整備中で、たしか駐車場もまだできていなかった様な気がする。今の芝生ゾーンがどのような状態だったか、それも記憶にない。撮影時の強烈な印象は、あたり一面の理解しがたいゴミの散乱であった。驚きが先に立って一瞬腹も立たなかったが、その日は8月9日、恒例の大津花火大会の翌日だった。それにしてもどうしてこれだけゴミを捨てるのか。あのときの異様な雰囲気だけは忘れがたい。
 以来10年以上がたち、対岸にビルが目立つようになった。

 

071.白さぎ遊ぶ

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 撮影日:1990.08.16
場所:石部町(現湖南市)石部

撮影:2002.09.01・1

 石部町、野洲川頭首工の水辺に遊ぶ白サギ。夏の朝、静かな水面に三上山が影を映す。

CD版コメント
 国道1号を栗東のほうから水口のほうへ向かい、 名神をくぐって数100mほど行くと、左側にガソリンスタンドや食堂などが建ち並ぶ一角がある。それぞれが適当な駐車スペースを持っているが、その駐車場から野洲川の向こうに三上山が見える。頭首工で水がせき止められているため、ここは普段でも水が涸れることはない。風がない日だと、昔の写真のように三上山が影を映し、静かな水面は白鷺の遊び場なのだが、今回行った日は風が強く、そういう雰囲気はなかった。
 ところで、それよりも驚いたことは、対岸 の県道27号沿いにかなり大がかりの工事が行われていて、もはや写真になり得ない状態になってしまっていた。
Web版追記:このときの対岸の大がかりな工事が頭首工の改修工事で、すべてが新しくなった。2002年写真2に見る水門も今はない。

       

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