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写真集『近江富士百景』

5  月

Web版初稿UP:2012.02.28
 

 

050.タ ン ポ ポ

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 撮影日:1980.05.03
場所:野洲町(現野洲市)三上

撮影:2002.08.07・1

 五月の高い太陽に、タンポポの種子がきらりと光る。ゴーストは天に舞い上がるタンポポの精。
 シューベルトの即興曲のアルペジオ。

CD版コメント
 これは撮影場所を云々する写真ではない。撮ったのは 行畑からR8三上へ向かうバス道のきわ、家庭菜園にふちに生えていたのを、ちょっとした息抜きに撮っただけのものである。とはいえ現在、広角レンズでこれだけの写角に建物を入れずに絵が作れるかどうか。

 

051. 暮れゆく三上

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 撮影日:1980.05.03
場所:甲西町(現湖南市)正福寺

撮影:2002.09.20・1

 甲西町、十二峰林道からの撮影。
 三上山の左手前、松の木と重なって光っているのが、「菩提寺」パーキングエリア横の農業用水池と、田植えが終わったばかりの田圃。三上山の左後方に細く光るのが琵琶湖。その向こうが比叡山から比良山に続く湖西の山並み。

CD版コメント
 名神側の入り口(県道22号八重谷越え入口・現在は閉鎖されている)から林道に入り、急勾配のヘアピンカーブを登り切って稜線へ出たあたり。初めて出会う風景がこれだった。稜線のいちばん北側、今アンテナが2本立っているあたりである。
 林道が開かれて、20年以上がたち、樹木の成長とともに徐々に視界が閉ざされていったが、その中にあって、この場所だけは最後まで貴重なビューピントとして残っていた。しかし、ここもついに今回行ったときには視界ゼロになっていた。

 

052.初夏の里

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 撮影日:1980.05.04
場所:守山市笠原町

撮影:2002.08.10・1

 撮影場所を詳しく記録していなかったので、山の姿、森の姿、お寺の屋根を頼りに、それと思われるところを探し回った。
 不思議に風景そのものの大枠はいまも変わっていなかった。しかし、二本足の巨大な電柱が立ち並び、畑の中にも小さな電柱が増えて、もはや絵になる風景ではなかった。

CD版コメント
 これは、さきに写真集にするときに場所を確かめているので、 今回はさほど手間取らなかったが、それでも田圃の中のどの道かとなると、再確認が必要だった。そしてさらに、厳密な意味での撮影場所となると、畦道へ入り込まねばならなかった。
  漠然と見ているだけでは、さほど変化がないように見るが、よく見ると、中くらいの電柱が増えているし、ワイドにすれば二本足の電柱も入ってくる。電柱の下まで行けば、それは避けられるが、山と民家との大きさのバランスが崩れてしまう。

 

053.レンゲ畑

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 撮影日:1993.05.05
場所:中主町(現野洲市)五条

撮影:2002.08.11・1

 レンゲ畑も少なくなった。所々にあることはあるのだが、私の場合、三上山との調和という必要条件を満たしてくれなければならないから難しい。
 そのレンゲ畑が中主町で見つかった。向こうに新しい家やアパートが見えるが、ぜいたくはいっておれない。遠方左端に見える建物が、新しく建てられた「中主町豊積の里文化センター」。

CD版コメント
 昔、といってもたかだか10年たらずのことだが、この写真を撮ったのは、中主町豊積の里文化センターができてさほど日にちが経っていないころだった。そのあと、手前に「ふれあいせんたー」が建ち、幼稚園が建った。 かくてここからの三上山は、幼稚園の屋根越しの風景となってしまった。
 場所は、兵主大社前の信号を基準として、近江八幡寄りに1本目、幼稚園寄りに1本目の それぞれの農道が交わるあたりである。

 

054.鯉のぼりのころ

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 撮影日:1993.05.05
場所:中主町(現野洲市)五条

撮影:2002.08.11・1

 中主町兵主大社の近くの直線道路に、「広島カープ」ファンが涙を流して喜びそうな鯉のぼりのパレード。
 こんなイベントができるのも、道路沿いに電柱がないから。もし電柱が立てば、鯉のぼりはおろか写真にもならなくなる。

CD版コメント
 鯉のぼりのパレードも、右の写真を撮ってからあと1年ほどだったろうか。 いつの間にかなくなってしまった。街路樹が植えられ、道路が整備されたが、同時におきまりの電柱が立った。しかしそれ以外、風景の大枠は変わっていない。 この場所の同定ポイントは、遠く三上山の真下に見えるアパート風の建物である。どちらの写真も壁が白く光り、かなり目立っているので、 注意して見ればすぐにおわかりいただけるはずである。
 撮影場所は、兵主大社前から県道32号を幼稚園のほうへ進み、1本目の農道を左へ折れたところである。

 

055.若葉のころ

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 撮影日:1991.05.06
場所:中主(現野洲市)町野田

撮影:2002年ごろ・1

 近江八幡市と中主町の境を流れる日野川の河川敷からの撮影。
 新緑の若葉が五月の太陽に光る。移動性高気圧に覆われた透明な光の中で、三上山がくっきりと見える。

CD版コメント
 NO.16「裸木・近江富士」と同じ木の新緑バージョンである。 若葉入れるため、木を画面の左側へ持ってきた。赤白のポールと三上山の関係も「裸木」と全く同じ。ただしカメラの高さが若干異なる。 今回の上の写真はアイレベルだが、昔の写真は腰よりも低い位置で撮っているはず。
 この写真は中主町側から撮っているが、対岸の近江八幡市側から見ても、十分絵になる(近江富士遊々に収録)。残念ながら工事中の現在はどうしようもない。ここからの撮影は、工事終了後、工事跡が風景になじむのを待ってからである。

 

056.暮れゆく池畔

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 撮影日:1990.05.26
場所:甲西町(現湖南市)菩提寺

撮影:2002.09.20・1

 甲西町菩提寺・名神高速道路パーキングエリア横の農業用水池(大山池)からの撮影。ここから見ると、夏至を挟んで5月から8月ごろに、 太陽は三上山に沈む。

CD版コメント
 今回撮影したときは、たまたま水が少なかったが、 普段はもう少し水位が高い。三上山の真下に、城の石垣のように見えるのが菩提寺PAである。私が三上山を撮りだしたころは、もう少し規模が小さくほとんど撮影の邪魔にならなかったが、その後拡張工事が行われ、白い擁壁が目立つようになった。
 そんな事情で足が遠のいていたが、 今回久しぶりに行ってみて、その擁壁が時間の淘汰を受けて、再び周辺の風景となじみはじめているような気がした。ここからの風景は、夏の夕方、太陽が三上山の背後に没するとき、その瞬間にとどめを刺す。

 

057.近江富士夕景

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 撮影日:1978.05.26
場所:野洲町(現野洲市)南桜

撮影:2002.09.20・1

 野洲町南桜、名神高速道路沿いにあるびわこ学園の裏山からの撮影。初夏の夕日が湖西の山並みに沈む。
 三上山の左手前に淡く光るのが、南桜・北桜の、まだ圃場整備されていないモザイク模様の田圃。ずっと遠くに光るのが琵琶湖。

CD版コメント
 かつて南桜から菩提寺へ向かうバスは、 今より少し手前で名神をくぐり、びわこ学園と名神の間を通って今のバス道へ出ていた。そのバス道から、何の苦労もなしにびわこ学園の裏山へ登ることができた。 今回、何年ぶりかでそこへ行ってみたが、木が生い茂りとてもとても登れるような状態ではなかった。
 ひょっとして、びわこ学園の裏から登れないかと、たまたま出会った女性にきいてみると、学園の関係の方だろうか、「学園の中を通り抜ければよい」と親切に教えてくださった。ということで、およそ20年ぶりくらいであろうか、 懐かしい風景に出会うことができた。
 Web版追記:このあとびわこ学園は北桜の希望が丘道路沿いへ移転。名神沿いの建物はすべてなくなった。

 

058.田園の朝

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 撮影日:1990.05.27
場所:栗東町(現栗東市)綣

撮影:2002.08.30・1

 JR琵琶湖線、守山・草津間で唯一残る田園風景に初夏の太陽が昇る。
 住宅工場が混在し、張り巡らされた電柱・電線だけは隠しようがない。いまこの近くに栗東駅がつくられ、風景が大きく変わりつつある。おそらくこの風景もこれが最後であろう。

CD版コメント
 三上山を取り巻く風景で、この10年間にこれほど大きな変化を遂げたところは他にはない。JR琵琶湖線栗東駅開業が1991年、写真集編集のために上の文章を書いたのが1994年。この時点ですでに変化は始まっていたのだが、 開業以来10年を越えて、もはや昔日の面影はどこにもない。
 住宅地の中を探し歩いて、やっと三上山が見える場所を見つけたのが上の写真である。もちろんこれも昔の撮影現場というわけではない。昔の写真の工場と山との大きさの関係、左に少し見える森などから、かつての撮影場所は、ここからもう少し後退した場所だろうと思われる。

 

059.三上に沈む

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 撮影日:1979.05.28
場所:甲西町(現湖南市)正福寺

撮影:2002.09.20・1

 甲西町、十二峰林道からの撮影。
 甲西町菩提寺近江台住宅地の近くから尾根道に取り付いて、岩根山・十二坊に続く十二峰林道。切り通しになった小さな峠の向こうの三上山に夏の太陽が沈む。

CD版コメント
 十二坊山頂から北に向かって林道を走れば、切り通しの向こうに真正面に三上山が見えるのだから、これほどはっきりした場所はない。しかしこの場所すら、数年前から確認できなくなっていた。 樹木が三上山を隠してしまったからである。
 このカメラの場所から、左後ろへカーブを一つ離れて、この道を取り入れた構図で絵を作ったこともある、懐かしい場所である。しかし、このように道路を含めた全体の地形を注意していても、昔の撮影位置は浮かんでこない。とにかく、カーブの向こうが木の影で見えないのだからお手上げである

 

060.初夏の入江

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 撮影日:1981.05.30
場所:守山市山賀町

撮影:2003.01.08・1

 守山市赤野井町・杉江町にまたがる静かな入江。芽吹きだした緑のヨシと、枯れた前年のヨシとがおもしろいコントラストを示す。右の方に見える守山市街地に高層建築が目立ち始めている。
 現在はここを湖岸道路が走り、風景が大きく変わった。この面影はいまはない。

CD版コメント
 書籍版では「赤野井町」となっているが、今回の確認により 「山賀町」と訂正。
 撮影メモには「赤野井」と記録していた。当然、今回も芦刈園あたりと決め込んでいた。しかし、 どうしても納得ができず、最終的に山の重なりを確かめてみると、かなりの違いがあることが判明。
 あらためて確認作業のやり直し。 結果、0.8Kmほど南の山賀町と下物町の境界付近と結論を得る。昭和45年発行の国土地理院地形図には、このあたりの小さな道路や内湖はほとんど 記載されておらず、何の目印もないまま「赤野井湾」と思いこんでいたためである。

       

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