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ニオの浮巣・2018年版へ

2017・6/7

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その壱その弐その参その四その五
その六その七その八その九その拾

1〜7は親鳥抱卵日々の記。大きな変化はありません。・・・・ 8・9でヒナが誕生します。




 わいわいU教室のFさんがやってきて、橋の上からカンムリカイツブリの巣が見られるという。橋の上?ホンマかいな。
 
    五月雨に 鳰(ニオ)の浮巣を見に行かん  芭蕉

 という句がある。カイツブリ(鳰)はヨシの間に巣を作る。水に浮いているため、水位が変化してもそれにつれて上下するだけで影響は受けない。この句を読んだ時にその解説から得たミニ知識である。琵琶湖のヨシの間だとしたら岸から見えるようなところではないだろう。船がなければ行けないはずだ。おそらくそんな巣を見ることは一生ないだろうと考えていた。ところがそれが見えるという、しかも橋の上から。

  橋の上 それならワシも見に行くぞ  Xハチ

 これは季語がないな。行く以上は多少は勉強もしていかんとと、二三、関係の本をあさってみた。読んだ通りの意味だと簡単に考えていたのだが、なんとまあ難しいもので、この世界では有名な三冊子という本があるのだそうな。”さんさっし”て何かと思ったら、”さんぞうし”と読むのだとか。それに次のような文があるのだと。すなわち、この句には、”詞(ことば)に俳諧なし、浮巣を見に行かんというところ俳也”と。
 ・・・梅雨の雨が降っています。さあ皆さん、二オの浮巣を見に行きましょう・・・。大津にいた芭蕉が近隣の皆さんに呼び掛けている句だと考えるのが我々凡人の解釈。ところが違うのだと。これは貞享4年夏、江戸にあった芭蕉が『笈の小文』の旅を前に内藤露沾(ろせん)に送ったのだという。江戸にあって鳰の湖を思うのが「俳」だとか。ハイ、もうやめます。

鳰の浮巣句碑(2017.08,22UP)

 ”鳰の浮巣”の句が芭蕉の作品群の中でどのような位置を占めるのか私は知らない。しかし、琵琶湖を抱く近江の地としては見過ごすことはできない作品であることはたしかである。句碑の一つや二つはあるだろう。
 乾憲雄著・淡海の芭蕉句碑(サンライズ印刷出版部・1994年4月1日刊)によれば南土山の常明寺境内にあるという。よし行ってみよう。



写真001.常明寺
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 寺はすぐに見つかる。国道1号を鈴鹿峠へ向かうとき、白川橋を渡って初めての信号が南土山。旧東海道が斜め右へ分かれていく。その手前の交差点、信号はない。寺名を示す案内があって、里道が右へ分かれている。そこから約500mで門前である。





写真002.禅俳僧虚白住寺跡碑
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 門前に「禅俳僧虚白住寺跡」の碑が建つ。また、津和野藩主の参勤交代で江戸へ出た森鴎外の祖父白仙が、帰途発病し、ここ土山で死去。当寺に葬られたという。







写真003.
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 門前に建つ「世界平和明治百年・不許葷酒入山門」碑。










写真004.鳰の浮巣句碑
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 鳰の浮巣句碑、境内大木の傍らに建つ。どこの句碑でも同じような状態だが、ほとんど字が読めない。それを予測して、カンカン照りでない日を選んで行ったのだが、逆に曇り空になってしまい五十歩百歩。さらにすぐ横に鐘楼がありそれが光を遮る。





写真005.ローアングル
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 あれこれやった末、ローアングルで見上げる角度が一番読みやすいことを見極める。バリアングル・ファインダーがなければどうにもならないところだった。







写真006.外から見た大木
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 とにもかくにもローアングルで撮り終り、外から大木を撮ったりしているうちに薄日が照りだす。これを逃す手はないと、再度句碑へ。







写真007.束の間の夕日
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 やはり鐘つき堂の屋根が邪魔をした。この木の影では他の時間帯でも直射日光が当たれば、やはり苦しかろう。むしろこのほうが楽かもしれない。
 とはいえ、彫りがかろうじて見えるだけで、字が読めるわけではない。何とも情けない。このままでこれが鳰の浮巣の句碑でございますとは義理でもいえたものではない。全然見当がつかない字を読めというわけではない。言葉は分かっているのだから何とかなるだろうと変体仮名に挑戦。「変体仮名 五十音順一覧」というサイトを頼りに、なんとかこじつけたのがこれ。あくまで素人のお遊び。専門家諸氏はどうかお笑いください。
 なおこの句碑、文字は桜井梅室という俳人のものであるという。文も筆も達者な文人俳人であったとか。といわれても私にわかるはずがない。乾先生の文からの受け売りである。




写真008.夕陽を受けた常明寺
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 駐車場へ戻った時には、夕日を受けた本堂の屋根の線が見事なカーブを見せていた。








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