ふるさと富士シンポジウム講演の一部です。 |
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「三上山の正面はどちらですか」という質問を時々いただく。山に表裏があるわけでなし、人間誰しも自分が日常的に見ているほうが正面だと思っているのがオチだから、「さあ。どちらでしょうね」と笑って流してきた。どちらが正面だろうと、目くじらを立てるほどのことではない。ところが、今回、写真集『近江富士まんだら』を編集するに当たって、この山の姿を子細に見直してみて、それが笑って済ませることではないことに気がついた。三上山は見事な方向性を持っていた。世間一般にいわれるような単純な「円錐形の山」ではなく、人間と同じように前後を持った姿を示していた。 ![]() 地図1 ![]() 図1.カシミール3Dによる投影図。 図1は上の地図1のいわゆる凹部の部分を、カシミール3Dによって、立体的に表現したものである。視点位置は、三上山の南方、旧東海道と名神が交差する辺りの上空である。雌山の両側に伸びる西尾根と東尾根、それに挟まれた凹部に秋の夕日が当たっているという設定である。 人間の顔は鼻筋を対称軸としている。三上山の凹部が対称形を示すとすれば、当然対称軸があるはず。そしてそれは三上山の山頂から出て南西方へ向かう線(北西方から来て、三上山の頂上を通って南西方へ向かう線)であるはずだ。(下の地図2・赤い線) ![]() 地図2 ■地図2のように、Y軸を45度傾け、それを対称軸として、対応する2点どうしを見比べてみよう。
以上、2006年11月、『ふるさと富士シンポジウム』での講演分。 |
補遺:「竜松岩場」のこと(2012年12月加筆) 三上山の正面は、山頂から方位225度、いわゆる南西方に位置する栗東市出庭の正面塚、ここから見た姿である。これは2006年11月に行われた『ふるさと富士シンポジウム』で発表した。しかし、後ろ姿については、その時点では全く意をはらっていなかった。ちょうど希望が丘・花緑公園の方向に当たり、山地が輻輳して三上山そのものが意外と見えにくいこともあって、どうせ南西方を除く扇形の部分はとくに変化があるわけでなしと考えていた。 ところが最近(2012年後半)になって、そんなに軽々しい問題ではないことに気がついた。実は、野洲川水系の分水界をたどっていて、花緑公園と野洲市妙光寺との境をなす尾根道が、大山川(野洲川水系)と家棟川との分水嶺であることに気がついた。そんなことがあって、その尾根道(花緑公園の案内板には北尾根縦走路とある)をたどっていて、とんでもない大穴が残っていたことに気がついたのである。 じつはいま、この岩場を紹介するのに、あずま屋をポイントとした。これは下からよく見えるという意味で使ったわけだが、それ以外にもう一つポイントがある。「古代峠」、花緑公園の案内板では「びわ峠」と並んで、目につくポイント名である。かつての古墳のあとだが、奥壁が崩れた状態で、大きな岩のトンネルになっている。この古代峠が北尾根縦走路上に位置する。現場に立つと巨大な古代遺跡で目を見張るが、残念ながら木立に隠れて、遠くから見る限り、存在感はない。 ![]() 実は古代峠から展望あずま屋への遊歩道と並行してもう1本、岩場へ向かう尾根道がある。遊歩道はすぐ右下を巻いており直接は見えない。左の写真がその尾根道と岩場である。 ![]() 花緑公園森林センターとわくわく学習館との間の庭から見上げた竜松である。右の方に展望あずま屋が見えるが、竜松は全く分からない。展望台の屋根の先端を水平に左へ移動させ、最高点からの下り勾配とクロスする辺りに岩場が見えてそこに立っている。拡大写真をどうぞ。 ![]() 話がくどくなった。実はこれが「竜松」の岩場から撮った写真である。実はこの竜松の位置は、図1.カシミール3Dによる投影図で、三上山の背後に見える赤い三角形の位置である。(厳密にいえば、この「竜松」の位置はピークそのままではなく、3,40mほど離れているが、三上山から後退する位置にあるから、方位的には大きな差はない)。 ![]() 同じ岩場から見たパノラマ展望写真である。当然の理ながら、左に天山、右に妙光寺山である。三上山本体の姿は、写真225を左右逆にした形。細かくいえば正面から見たときの右肩のふくらみ(南桜から見たときの尖りの部分)がわずかに足りない。頂上から北西方向の線より、わずかに北へ振れているためだろう。参考に地図2をどうぞ。赤三角形が竜松の位置である。
補遺の補遺:城山のこと(2012年12月加筆) ひょんなことから、思っても見なかった竜松の岩場が見つかった。となると人間欲が出る。もっといいポイントがありはしないか。探してみると城山があるじゃないか。希望が丘芝生ランドの北に見える傾いた台形の山である。地図を見て驚いた。なんと対称軸からはずれることごくわずか。精密な測量機器を持つわけでもない素人が考えること、ほぼ線上といってもいいぐらいである。地図2の赤線の北東端のすぐ近くにある286mの水準点、そこが城山の頂上である)。 ![]() 城山の頂上から見たところである。Oさんの写真もこんなんだった。そういえば三上山の下に希望が丘の駐車場が写っていた(三角形に見える)。木が茂って苦しいが、とにかく見える。左肩のふくらみ(正面から見れば右肩)などは、竜松よりははるかに忠実。、 ![]() 左右の見通しが苦しい。左は右へ寄って、右は左へ寄って、その間の位置の差3mぐらいだったか。それを強引にくっつけた。写真225の左右逆像にはなっているようだ。城山の標高286m。「山は高きから見よ」という。正面から見るよりは高さが感じられるのも当然の理である。 |