太くて黒い幹を入れるのが桜を撮る一つの定石である。それは間違ってはいなかったが、いまの場合はその木の幹がズボンとして愛想がなかった。「夕照」は、苦し紛れのタイトルだったのではないか。いまの場合、夕日の桜は幹の向こうにしか見えないのだから。